[II-P5-5-07] 心機能改善まで時間を要した心房粗動による頻脈誘発性心筋症の乳児例
Keywords:頻脈誘発性心筋症, 心房粗動, 急性心不全
【はじめに】小児の構造的異常のない心臓において心房粗動の発生は稀とされており、その88%は生後2週間以内に発症すると報告されている。今回、我々は心房粗動による頻脈誘発性心筋症(TIC)のため著しい心機能低下を認め、頻拍停止後の心機能改善に時間を要した症例を経験した。【症例】生後5か月の男児。1か月間続く咳嗽、喘鳴のため前医へ紹介されたが、心拡大と著しい心収縮不良を指摘され当院ICUへ緊急搬送された。心拍数200/分、心臓超音波検査で左室拡張末期径(LVDd) +7.0SD、左室駆出率(LVEF) 14%と著明な心機能低下を認め、十二誘導心電図で心房粗動を認めた。ショック状態であったため、気管挿管のうえ人工呼吸器管理、心血管作動薬による急性心不全治療を開始し、経食道心臓超音波検査で心内に血栓がないことを確認のうえカルディオバージョンを行い洞調律に復した。頻脈停止後、LVEF 20%前後で左室拡大は持続し、心機能の改善に時間を要した。呼吸循環動態は安定していたため急性心不全治療を漸減し、第12病日に人工呼吸器から離脱、第29病日までに全ての心血管作動薬を終了した。同時にカルベジロール、エナラプリル内服による慢性心不全治療を開始、漸増し、心房粗動の再発がないことを確認のうえ第41病日に退院となった。退院時のLVDd +4.4SD、LVEF 40%と心機能低下は残存していたが、頻脈停止後98日の外来受診ではLVDd +2.6SD、LVEFは59%まで改善した。【まとめ】文献的にTICの頻脈停止後、平均51日で心機能の改善が期待できると言われており、本症例の心機能改善には長期間を要していることが示唆される。小児のTICの原因として心房粗動は極めて稀である。小児心房粗動発症のほとんどが新生児期であることを考えると本症例も新生児期から乳児期まで長期間の心房粗動が持続していた可能性があり、本症例の心機能障害が重篤であった経過を支持する。