[II-P5-5-08] 胎児診断により新生児期から良好な治療介入ができた、MYH7遺伝子変異を認めた左室心筋緻密化障害の一例
キーワード:左室緻密化障害, MYH7, 胎児診断
【はじめに】左室心筋緻密化障害(LVNC)において1歳未満の発症、左室の拡大・収縮低下、遺伝子変異の存在などが予後不良因子とされる。【症例】母は25歳初産婦。既往歴、家族歴に特記事項なし。胎児心臓超音波検査で左室肥大と三尖弁逆流を指摘され、在胎30週に当院を受診した。当院の検査では推定体重z=-1.5SDと軽度の発育不全を認め、CTAR 41.7%の心拡大と左室FS 20.0%と心収縮低下、軽度の三尖弁逆流を認めた。胎児機能不全は認められなかった。以降も心拡大や心機能の増悪はなかったが、在胎35週の検査で非緻密化層の増大(N/C比2.5)と間隙間への血流を認め、LVNCと診断した。児は在胎38週5日、体重2616g、Apgar score 8-9で選択的帝王切開にて出生した。出生後のエコーでも非緻密化層の増大と軽度の壁運動低下(LVEF 52%)を認めた。明らかな心不全増悪や不整脈、血栓症は認めず、水分管理を行いながら利尿剤、β遮断薬を導入し、日齢41に退院とした。現在3歳4か月となるが、β遮断薬、ACE阻害薬を内服して心不全なく、成長・発達も良好である。また、母体の心臓超音波検査でもLVNCの所見を認め、母児ともにMYH7遺伝子のミスセンス変異(c.1106G>A, p.Arg369Gln)が認められた。【考察】左室緻密化障害において特に新生児期、乳児期発症例では10-15年で約半数が心移植の適応あるいは死亡するとの報告がある。今回の症例は予後不良因子を多く認めているが、胎児期からLVNCを疑い、計画的な分娩と出生後の心不全治療を行えたことで現在良好に経過している。LVNCにおいては早期の診断と治療が重要である。