[II-P5-6-10] 脊髄性筋萎縮症I型患者に対するオナセムノゲン アベパルボベク投与前後の心機能評価
キーワード:脊髄性筋萎縮症, オナセムノゲン アベポルボベク, 心筋障害
【背景】脊髄性筋萎縮症(Spinal muscular atrophy; SMA)は、脊髄前角細胞の変性・消失による筋萎縮と進行性筋力低下を特徴とする常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)性の神経筋疾患である。SMAに対する遺伝子治療薬として、オナセムノゲン アベパルボベクが実用化されたが、本薬はマウスにおいて心室心筋に浮腫・線維化を伴う単核細胞浸潤、心筋変性・壊死や心房血栓を認め、患者を対象とした臨床試験においてはトロポニンIの軽度上昇が認められた。トロポニンIの上昇について臨床的な問題はないと判断されたが、マウスと同様に心筋障害が発現しているかは不明である。今回、本薬投与後の心筋障害の有無を評価するため、詳細な心機能評価を行った。【方法】対象は本薬を投与したSMA I型患者。本薬投与前後のCK-MB、トロポニンI及びNT-proBNPの測定と、Speckle tracking法による左室長軸方向の心筋ストレイン(global longitudinal strain; GLS)解析を含めた経時的な心臓超音波検査を実施した。【結果】本薬を投与された症例は2例だった。症例1は1歳11ヵ月男児。トロポニンI、CK-MB、NT-proBNPいずれも有意な上昇を認めなかった。GLSには変化を認めなかった。症例2は1歳7ヵ月女児。トロポニンI、CK-MBは有意な上昇を認めなかったが、NT-proBNPが投与前227 pg/mlから投与7日後に494 pg/mlへと軽度上昇し、GLSが-22.1%から-18.9%へと軽度低下したが、いずれも自然に改善した。【考察】本薬の臨床試験ではトロポニンIの軽度上昇を認めたが、今回の2例ではトロポニンI、CK-MBは上昇を認めなかった。1例でNT-proBNPの軽度上昇とGLSの軽度低下を認めたことから、軽度の心筋障害・心負荷を発現した可能性が考えられた。本薬の投与経験はまだ限られており、SMA患者において心筋障害が発現するかを明らかにするためには更なる症例の蓄積が必要である。