[II-P5-8-07] フォンタン手術前後のトロンボモジュリンの変化
キーワード:フォンタン循環, トロンボモジュリン, 遠隔期
【背景】フォンタン手術(F術)後の患者のトロンボモジュリン(TM)値は低いことを報告してきた。その要因として、静脈圧上昇に伴う内皮障害と考えているが明確ではない。そこで、フォンタン手術前後のトロンボモジュリン値を比較検討したので報告する。【対象・方法】F術前後のカテーテル検査時に上大静脈(SVC)、下大静脈(IVC)、大腿動脈(FA)のトロンボモジュリン値を測定した20例(男/女:8/12)。当院倫理委員会の承認のもと、同意の上行った。対象はHeterotaxia4例、左心低形成症候群・Ebstein病・心室中隔欠損を伴わない肺動脈閉鎖各3例、三尖弁閉鎖2例、その他5例。【結果】前/後で結果を示す。TM値(TU/ml):SVC 4.9±1.1/6.0±1.9、IVC 4.8±1.0/6.0±1.8、FA 4.9±1.0/6.1±1.9、静脈圧(mmHg):SVC 7.3±3.6/8.5±2.8、IVC 2.4±3.3/8.4±1.9、SaO2(%):85.8±14.4/94.6±0.4、ヘマトクリット(Ht)(%):45.8±12.4/40.2±9.1、ヘモグロビン(Hb)(g/dl):15.6±1.4/13.3±1.2、BNP(pg/ml):18.1±238/15.5±255、術後期間(y):1.9±0.8/0.6±0.0。BNP有意差がなく、HtとHbは有意に低下し、他はすべてF術後が有意に高値であった。【考察】トロンボモジュリンが低下する要因が静脈圧上昇であり、F術前後でIVCの圧が高くなることで、術前より術後が低値になるのではないかと考え測定したが、結果としてはIVCの圧の上昇に伴うTMの低下は認めなかった。HtやHbが低下しており、血液粘性が下がっているにも関わらず、SVCでもTM値が上昇していることから、手術の影響が大きいと考えられた。以前の研究でもTM値は経年的に低下しており、静脈圧上昇後すぐには内皮障害の影響が現れず、徐々に影響が出てくるものと考えられた。