第58回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

術後遠隔期・合併症・発達

ポスター発表(II-P5-8)
術後遠隔期・合併症・発達 II

2022年7月22日(金) 16:40 〜 17:40 ポスター会場

座長:稲毛 章郎(日本赤十字社医療センター 小児科)
座長:前田 潤(東京都立小児総合医療センター 循環器科)

[II-P5-8-08] 細い肺動脈を伴った若年Fontan患者の心肺循環と肝機能

浜道 裕二, 松村 雄, 小林 匠, 斎藤 美香, 吉敷 香菜子, 上田 知実, 矢崎 諭, 嘉川 忠博 (榊原記念病院小児循環器科)

キーワード:Fontan, 肺動脈, 肝機能

【背景と目的】細い肺動脈を持つFontan患者では肺循環が停滞し肝機能障害を来すことが予想されるが、報告はほとんどない。今回若年Fontan患者で検討した。【方法】対象は、fenestrated Fontanを施行し始めた2007年以降にFontanが施行され、2021年までに心臓カテーテル検査でPAIを測定した18歳未満の261人。細い肺動脈をPA Index<150mm2/m2(小PAI)と定義。小PAI群(33人)と非小PAI群(228人)で肺循環、心機能、肝機能因子を比較した。【結果】小PAI群と非小PAI群で、カテ時年齢に有意差はなかったが、小PAI群の方がFontan時年齢は有意に高かった。肺循環では両群間で、上大静脈圧、肺動脈楔入圧、肺血管抵抗に有意差はなかった。小PAI群の方が有意に、fenestration付きのFontan術を受けた率が高く(79% vs. 31%)、肺血管拡張薬の使用率が高かった(59% vs. 37%)。大動脈の酸素飽和度は、小PAI群の方が有意に低かった。心機能では両群間で心拍出量、主心室の拡張末期圧及び駆出率に有意差はなかった。しかし小PAI群の方が有意に、心室の拡張末期容積(117% vs. 99%: p=0.019)、収縮末期容積(55% vs. 43%: p=0049) が大きかった。心不全治療では、ACEI/ARBの使用頻度に両群間で有意差はなかったが、βブロッカーの使用頻度は小PAI群の方が高かった(67% vs. 46%: p=0.0030)。肝機能では両群間で、T-bil値、Alb値、ALT値、AST値に有意差はなかった。しかし小PAI群の方が、GGT値が高値であった(75 vs. 50 UI/L: p=0.029)。【結語】小PAI群は、肺動脈が細いにもかかわらず肺循環障害は緩和されていた。高いfenestration付加率と肺血管拡張薬の使用率が寄与していると考えられる。若年期の小PAI群では収縮末期容積が増大し、GGTが上昇していたが、他の心機能、肝機能に差がないことにより注意が払われない可能性がある。小PAI群では、肺循環だけでなく心機能、肝機能もフォローがした方が良い。