[II-P5-8-09] 肺静脈閉塞を伴うフォンタン術後症例の検討
キーワード：フォンタン術後, 肺静脈閉塞, 予後
【背景】肺静脈閉塞性病変はフォンタン術後の予後不良因子の１つであるが、経過中に肺静脈閉塞を来してしまう症例を時に経験する。【目的】肺静脈閉塞を伴うフォンタン術後症例の臨床像を明らかにすること。【対象と方法】当院の肺静脈閉塞が認められたTCPC症例5例について、診療録を用いて後方視的に検討した。【結果】右側相同が４例でうち３例はTAPVC修復術後（III型２例、II型１例）、HLHSが１例。全例でfenestration付TCPCが行われ、手術時年齢は１８-３９ヵ月（中央値２５ヵ月）。閉塞枝数は１枝閉塞が４例、２枝閉塞が1例。１枝閉塞のうち３例はTCPC前に１枝の閉塞あるいは血流量低下が既に確認されており、いずれも心尖と同側の１枝であった。もう一例の１枝閉塞症例は心尖対側の１枝で、TCPC後に２枝の狭窄と１枝の閉塞を来したため外科的狭窄解除術２回行い、狭窄病変は解除された。２枝閉塞症例は修復を要さないTAPVCII型がある右側相同で、TCPC前に心尖側１枝の閉塞が確認されていた。TCPC後に同側のもう１枝の狭窄を認めたため外科的解除術を行ったが３か月後に閉塞した。TCPC後の観察期間は４７-１６３ヵ月（中央値８８ヵ月）で、fenestrationは１例で自然閉鎖（閉鎖時CVP 13）、３例で拡大術を行っていた。SpO2は82-90%（中央値 84%）、２枝閉塞症例ではCVP 19と高値で腹水貯留のため入退院を繰り返している。また１枝閉塞症例でも肺動脈が細く（PA index 110）、房室弁置換術も要した１例では同様に腹水貯留による入退院を繰り返した。PLEはHLHSの1例で認めた。TCPC後のAPCAコイル塞栓術は全例で行われており、喀血は２枝閉塞の１例で１回、１枝閉塞症例ではみられなかった。【考察・結語】肺静脈閉塞のあるフォンタン術後症例の予後は不良であるが、１枝閉塞であれば短期・中期予後は悪くない症例はみられる。長期予後についてはさらなる観察が必要である。