[II-PAL-01] 重症大動脈弁狭窄症に対する胎児治療:本邦初の実施例
Keywords:fetal cardiac intervention, critical aortic stenosis, hypoplastic left heart syndrome
【背景】胎児重症大動脈弁狭窄症は胎内で左心低形成症候群に変化することが知られており、その変化を防ぐために、欧米を中心に胎児バルーン大動脈弁形成術が行われてきた。【経緯】日本胎児心臓病学会の胎児治療委員会主導のもと、2015年に国立成育医療研究センターおよび2016年に日本小児循環器学会の倫理委員会の承認を得た。そして2021年8月に本邦初の手技を実施した。【症例】母体は35歳、妊娠25週1日に国立成育医療研究センター胎児診療科に紹介された。母体、胎児選択基準をすべて満たし、母体および配偶者の承諾を得て、妊娠25週6日に手技を施行した。母体は仰臥位で、穿刺に適切な胎位を得た。推定体重938 g、大動脈弁輪径は3.3 mm (Z=-2.21)であった。母体を鎮静し胎児麻酔を行った。経母体腹壁エコーガイド下で、18 G穿刺針を用い、穿刺針は母体腹壁、胎児胸壁、左室心尖を経由し、左室流出路に固定した。穿刺針の内筒を抜き、テルモ社製の冠動脈拡張用バルーンカテーテル (TazunaR 3.0 * 15 mm(弁輪径対し90%)を、大動脈弁を通過した日本ライフライン社製0.014 inch ガイドワイヤー(STAR)に沿って大動脈弁位にすすめ拡張した。手技後穿刺針のなかにバルーンカテーテルを引き込まずに一緒に抜去した。直後に血液が一過性に心嚢内に貯留したが、すぐ止血され更なる介入は要さず、明らかな有害事象は認めなかった、術後から大動脈弁通過血流は増加したが、大動脈弓の血流は両方向性であった。そして在胎38週1日 誘発分娩で体重 3,406 gで出生した。動脈管依存性の血行動態であり、Lipo-PGE1を開始し、日齢2に経皮的バルーン大動脈弁形成術を施行した。しかし術後もLipo-PGE1を中止することができず、日齢10に両側肺動脈絞扼術を施行した。【まとめ】本邦初の胎児重症大動脈弁狭窄症に対するカテーテル治療をプロトコール通り安全に施行できた。しかし二心室循環は得られていない。