[II-PAL-02] 補助人工心臓を要する小児拡張型心筋症患者のbridge to recoveryにおける心筋DNA損傷の臨床的意義
キーワード:拡張型心筋症, 左室補助人工心臓, Brigde to Recovery
【背景】我々は、心臓移植ドナー不足、移植待機期間延長に伴い,重症心不全に対する補助人工心臓装着後のbride to recoveryに関する知見が重要と考え、心筋の組織学的所見とbridge to recoveryの関係について報告してきた。昨今、成人拡張型心筋症(DCM)患者において、心筋細胞のdouble strand DNA損傷、細胞老化が心不全治療へのresponderのmarkerとなる可能性が報告されている。小児DCM患者においてはまだDNA損傷と治療反応性について検討された報告はない。そこで、我々は小児補助人工心臓Berlin heart EXCOR(BHE)装着を要した小児DCM患者における、心筋細胞DNA損傷の臨床的意義を検討した。【方法】2013から2021年に当院でBHEを装着した28例のうち,10kg未満でBHE装着したDCM症例19例(装着時年齢中央値0.68歳(interquartile range (IQR) 0.36-1.33), 男児5、女児14)を対象とした。EXCOR離脱はoff testを行い,離脱基準を満たした症例に行った。組織学的検査として左室補助人工心臓(LVAD)装着時にcoringした左室心尖部を用いて、リン酸化ヒストンタンパク質の一種であるγH2AXを心筋DNA損傷markerとして検討し、γH2AX陽性心筋細胞割合を評価した。γH2AX陽性率とBHE離脱の関係はlogistic regression分析を用いて評価した。【結果】BHE補助期間は273(147-426)日。8例で心機能改善を認め、BHEを離脱した。心臓移植到達8例、装着中2例、全身疾患の顕在化で適応外となり離脱した症例が1例であった。心筋細胞中のγH2AX陽性細胞割合は2.7(1.3-5.4)%であり、logistic解析でBHE離脱とは有意な関連を認めた(Odds Ratio 0.08 [95%CI 0.0067-0.98], p=0.048)。ROC曲線より閾値は2.4%(AUC0.95、感度1.0、特異度0.91)であった。【まとめ】細胞老化/DNA損傷markerであるγH2AX陽性細胞の割合はbridge to recoveryと関連しており、予後予測因子となる可能性が示唆された。