[II-PAL-03] 入院診療を必要とする成人先天性心疾患患者の現状と今後の展望
Keywords:成人先天性心疾患, JROAD-DPC, 計画外入院
【背景】近年の診断・治療の進歩により、多くの先天性心疾患(CHD)患者が成人期に到達し、その数は小児患者をはるかに上回るとされる。これらの成人先天性心疾患(ACHD)患者は、加齢とともにCHDに関連したあるいは後天的な心血管合併症による入院診療、特に非計画入院を要することが増えるが、本邦における現状は明らかでない。【対象・方法】日本循環器学会主体のデータベースである循環器疾患診療実態調査(JROAD-DPC)に基づき、2012年4月から2018年3月までのACHDに関連するICD-10コード病名を有する15歳以上の入院を対象とした。20診断群を軽症・中等症・重症・その他の疾患複雑性重症度に分類し、非計画入院について患者背景や入院中死亡のリスク因子を検討した。【結果】全入院数は39676件で、そのうち10444件(26.3%)が非計画入院であった。入院時年齢(中央値)は57歳(34-75歳)、50.8%が男性であった。重症群の占める割合は2012年の16.8%から2017年の22.4%へ増加していた。重症度別での入院時年齢は軽症70歳、中等症39歳、重症32歳、一人当たりの平均入院回数は軽症1.22回、中等症1.47回、重症1.78回で、重症例ではより若年から多くの非計画入院を経験していた。併存症としては心不全が39.2%と最も多く、不整脈が23.7%であった。入院中死亡は765件で、非計画入院に占める割合は7.3%、リスク因子は50歳以上の中等症群、NIHA III以上、心不全、出血、敗血症、大動脈解離の併存症であった。【結論】CHDに対する外科手術の進歩により中等症群は50-60歳、単心室を始めとする重症群は30-40歳に到達しつつあり、その年代に一致した非計画入院数の増加がみられた。今後は、CHD入院患者の数の増加に加え、さらに疾病複雑性の重症化への構造変化が見込まれる。成人重度複雑性症例の非計画入院に対応できる高い専門性を有する診療体制構築が急務の課題であると考えられる。