第58回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患

一般口演26(III-OR26)
肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患 I

2022年7月23日(土) 12:50 〜 13:40 第4会場 (中ホールA)

座長:土井 拓(天理よろづ相談所 小児科/先天性心疾患センター/周産期センター)
座長:南沢 享(東京慈恵会医科大学 細胞生理学講座)

[III-OR26-04] 周産期低酸素刺激によるSuHxラットの致死的閉塞性肺血管病変:肺動脈平滑筋細胞における過増殖および炎症性表現型と関連DNAメチル化ステータス

大下 裕法1, 三谷 義英2, 澤田 博文2, 坪谷 尚季2, 淀谷 典子2, 大橋 啓之2, 大矢 和伸2, 丸山 一男3, 平山 雅浩2 (1.豊橋市民病院 小児科, 2.三重大学 医学部医学系研究科 小児科学, 3.三重大学 医学部医学系研究科 麻酔集中治療学)

キーワード:肺高血圧, 周産期低酸素, エピジェネティクス

【目的】肺動脈性肺高血圧症(PAH)は進行性かつ致死的な疾患である。SUGEN/Hypoxia(SuHx)ラットはヒト様の閉塞性肺動脈病変(PVD)を再現したモデルだが、ヒトのPAHとは異なり致命的ではなくむしろ長期的には可逆的であるという限界がある。我々はPAHの発症、増悪に寄与する因子を悪化させることで致死的かつ進行性の新しい動物モデルを構築できないか検討した。胎児発育不全を起こす周産期低酸素(PeriHx)はSuHxラットのPVDを悪化させるか検証し、そのメカニズムを検討する。【方法】周産期の低酸素暴露によりPeriHxラットを作成した。7週齢でSUGEN投与と低酸素暴露を行い15週齢のSuHxラットを作成した。PeriHxの有無にSuHx処置をかけ合わせた4群を作成し(N=40)、15週齢で血行動態と肺血管形態を解析した。追加実験で7週齢のPeriHxラットで循環動態、血管病変(N=8)を解析し、培養継代した肺動脈平滑筋細胞(PASMC)における増殖能、炎症誘発性(N=12)、網羅的DNAメチル化解析(N=6)を行った。【成績】PeriHxは15週齢のSuHxラットの体重増加率、生存率(60%vs100%)、RVSP、RVSP/AoSP、RV/LV+IVS(<.001)と閉塞性血管病変率、叢状病変率、中膜肥厚(<.005)を悪化させた。PeriHxは7週齢健常ラットで体重、血行動態、PVDの各指標に影響なく、継代PASMCの増殖能と炎症誘発性を亢進(<.005)させた。PeriHxはDNAメチル化解析により35の異なるメチル化領域が同定され、その一つであるホスドシン様タンパク質(Pdcl)をコードする領域におけるメチル化はPeriHxのPASMCsにおけるPDGF-BB誘発のPdcl mRNAの発現低下と関連していた。メチル化領域の機能濃縮解析により、細胞増殖や炎症過程(Wnt5AやROR1)との関係が明らかになった。【結論】PeriHx刺激とSuHx処置により致死的なPAHラットモデルを作成した。継代PASMCsにおける表現型変化と機能的に関連するDNAメチル化の差異が、致命的な閉塞性PVDの原因となる可能性がある。