第58回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患

一般口演26(III-OR26)
肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患 I

2022年7月23日(土) 12:50 〜 13:40 第4会場 (中ホールA)

座長:土井 拓(天理よろづ相談所 小児科/先天性心疾患センター/周産期センター)
座長:南沢 享(東京慈恵会医科大学 細胞生理学講座)

[III-OR26-05] フォンタン術前の肺血管拡張薬が術後の肺循環および管理に及ぼす有効性

佐藤 智幸, 森田 裕介, 鈴木 峻, 古井 貞浩, 岡 健介, 横溝 亜希子, 松原 大輔, 関 満, 山形 崇倫 (自治医科大学とちぎ子ども医療センター 小児科)

キーワード:肺血管拡張薬, フォンタン, 肺循環

【背景】肺血管拡張薬(pulmonary vasodilator : PV)がフォンタン(F)循環の改善に寄与することは報告されているが、F術前のPV導入がF術後に及ぼす影響については明らかでない。
【目的】F術前のPVが術後の肺循環とその管理に及ぼす影響を明らかにする。
【方法】対象は当院で施行したF手術患者のうち、術後の心臓カテーテル検査を施行している41例(肺静脈狭窄合併例は除外)。F術前のPV導入の有無により、PV(-)群、PV(+)群にわけ、F術前後の心臓カテーテル検査での上大静脈または中心静脈圧(CVP)、肺血管抵抗(Rp)、F術後のPVの増減について後方視的に検討した。
【結果】群別の症例数はPV(-)群17例、PV(+)群24例。グレン(G)術前でのPV導入は4例、G術後でのPV導入は20例であり、G術後のPV導入理由はCVP高値、低酸素血症であった。PVの種類は1剤14例、2剤9例、3剤1例であった。F術前のCVP(mmHg)、Rp(Wood単位・m2)はそれぞれPV(-)群:9.9±1.3、1.7±0.5、PV(+)群:11.0±1.6、1.8±0.6で、CVPはPV(+)群で有意に高値だった。PVの数がF術後に増加したのはPV(-)群10例(59%)、PV(+)群5例(21%)で、PV(+)群のうち3例(13%)でF術後にPVの種類は減少した。F術後のCVP、RpはそれぞれPV(-)群:8.9±1.3、1.5±0.5、PV(+)群:8.6±1.5、1.2±0.4で、RpはPV(+)群で有意に低値だった。PV(-)群ではF術前後でCVP、Rpとも有意な変化はなかったが、PV(+)群ではCVP、Rpとも有意に低下した。
【考察】F術前からのPV導入は、良好な条件でF術に臨めるだけでなく、F術後のより良好な肺循環の構築に寄与することが示唆された。F術前のPVの積極的な導入は治療戦略の一つと考えらえる。