[III-OR27-02] 左心低形成症候群の予後改善のため当院で行ってきた治療戦略の変更と現状の問題点
Keywords:左心低形成症候群, 手術成績, 遠隔予後
【目的】左心低形成症候群 (HLHS)の予後改善のため当院様々な治療戦略の変更を行ってきた.これらが実際に成績改善につながっているか,問題点は何かにつき検証した.【方法】当院では04年以降原則初回に両側肺動脈絞扼術(BPAB)とし二期的Norwood (N)手術を行う方針として成績が改善した.さらに10-12年にかけ,RV-PA shunt,早期のBPAB,早期のN,弓部の積極的な心膜パッチ補填,積極的な凝固因子補充したMUFを導入した.今回の検討では,04-12までに初回手術介入した前期32例と,現在の方針が確立した12-21年までの後期47例で,両者の成績の改善効果,現方針の問題点につき検討した.【結果】前,後期で,BPAP時の日齢は3.8±2.1,3.0±3.4日で後期で小さい傾向があり,入院死亡率は5/32 (16%),0/45 (0%)で後期が有意に低かった.N時日齢は53±31,28±20日で後期で有意に小さく,入院死亡率は11/27 (41%),4/47 (9%)で,後期で有意に低かった.待機例等を除いたBDG (G)到達率は,14/32 (44%),38/43 (88%),Fontan (F)到達率は,8/32 (25%),26/36 (72%)で,いずれも後期で有意に改善していた.一方後期での死亡例を見ると,N後4例,G後6例,F後1例の計11例の死亡のうち3例は冠動脈(CA)異常 (両CA閉鎖,左室-CA瘻),2例は肺静脈還流異常に伴うPVO,3例はTR悪化による心不全,3例はshuntの狭窄が疑われた.また,Fのtake downが2例あり,1例はPVO,1例は門脈低形成が原因だった.【考察と結語】HLHSの治療成績は,早期手術介入,術式や体外循環の工夫により改善が得られていた.Shuntの中枢側狭窄が疑われる例があり導管の右室の固定位置に改善の余地があった.中等度以上のTRには手術介入しているが全経過にわたり危険因子となりえ,より早期介入や手技の改良が必要と思われた.積極的な心膜補填により肺動脈狭窄によるF適応外例はなかったが,PAが細い例が多く,遠隔予後をさらに注意深くみていく必要がある.