[III-OR27-03] 大動脈弁変形を伴う心室中隔欠損症術後の大動脈弁機能及び肺動脈弁機能の検討
キーワード:心室中隔欠損症, 遠隔期, 肺動脈弁機能
【背景】大動脈弁変形を伴う心室中隔欠損(VSD)は手術時期に関して一定の見解がなく,肺動脈弁機能を含めた遠隔成績の報告も少ない.【目的】術後遠隔期の大動脈弁及び肺動脈弁機能を後方視的に検討した.【方法】2002年以降当院で治療介入したVSD(両大血管下型:I)及び大動脈弁変形を伴うVSD(傍膜性部型:II)や(筋性部型:IV)の180例のうち大動脈弓離断・縮窄例を除外した158例を対象とした.VSD(I)は経肺動脈弁,VSD(II)及び(IV)は経三尖弁アプローチで,欠損孔はGore-Tex patchを使用し結節で閉鎖.術前カテーテル検査及び,術前,術後の超音波検査で大動脈弁逆流(AR),右室流出路狭窄(RVOTS),肺動脈弁逆流(PR)を評価しリスク解析を行った.【結果】中央値で手術時年齢26ヶ月,体重11.1kg. VSD(I)が130例, 大動脈弁変形を伴うVSD(II)及び(IV)が28例.術後フォロー期間は6.5年(1ヶ月-17年),周術期死亡,遠隔死亡,ペースメーカー留置なし.術後ARに関しては, 遠隔期にnon:70例,trivial:65例,mild:23例,moderate以上なし.AR mildとAR mild未満で比較すると,中央値で手術時年齢(68/21ヶ月),体重(16.8/10.6kg), VSD size(9.0/8.0mm),術前AR mild例(9/6例)で有意差を認めた(P<0.05).術後RVOTSに関しては,早期に2m/sを超えた症例は23例(15%)だったが,中央値7年後の評価で20例(87%)が2m/s未満に改善し(P<0.05),経過の中で3m/sを超える症例は認めず.術後PRの経時的変化では5年で20%, 10年で30%, 15年で40%の症例がPR mildを認め,moderate以上なし. PR mildとPR mild未満で比較すると,手術時年齢体重に有意差なく,VSD type ((I)vs(II or IV))と肺動脈弁をまたぐ運針数(中央値4針vs 3針)が有意なリスク因子であった(P<0.05).【結語】術前ARがmildまで進行した例は術後に改善しない可能性があるため, AR出現時には増悪する前に早期手術が必要と考えられた. また, 術後遠隔期にPRを発症する症例が散見され,注意深い経過観察が必要と思われた.