[III-OR27-04] Ross手術の成績と今後の課題
Keywords:ロス手術, 遠隔成績, 再介入
【目的】小児期およびAYA世代の大動脈弁疾患においてRoss手術(Ross-Konno手術を含む)は人工弁置換術に対する優越性が近年再評価され、海外のガイドラインにおいても大動脈弁形成術(AVP)とともに条件付きではあるが推奨されている。当院のRoss手術の治療成績を検討し、今後の課題について検討したい。【対象】当院において1997年11月以降に行われたRoss手術は58例(Konno法による弁輪拡大の併施は6例)で年齢は1歳未満1例、1-5歳5例、6-11歳22例、12-17歳20例、18歳以上10例。疾患内訳は単独AS 19例、単独AR 19例、ASR 19例、生体弁不全1例。先行治療はすべてASまたはASR症例に対してで経皮的大動脈弁形成術(PTAV)12例、AVP 5例(交連切開術4例、弁尖再建術1例)であった。【結果】大動脈弁に対する再介入をエンドポイントとし、術後最長24.2年(中央値7.6年)の観察期間において手術死亡、遠隔死亡なし。AR進行のため再介入となったものが4例(9.3%)認め、AVR 1例、Bentall手術3例でRoss術後11、15、19、19年目であった。また成長に伴うRV-PA conduit交換術時(Ross術後17年目)に大動脈基部拡大に対してFlorida sleeve法による基部縫縮・補強を併施したものが1例あった。【結論】Ross手術の成績は良好であり抗凝固不要や成長の可能性などの点で有用性が高いが、術後遠隔期10年を超えるとAR増悪や基部拡大のため再介入を要する症例を散見するようになる。当院では最近、AYA世代のRoss手術時にvalsalva graftによる基部補強を加えて遠隔期再介入の回避を図っているが、成長段階の小児期では人工物を用いた補強が困難であり、遠隔成績の改善において今後の課題である。