[III-OR28-02] HOIL-1L遺伝子は細胞周期制御による心筋細胞成熟分化に影響し、その異常は拡張型心筋症発症の原因となる
Keywords:拡張型心筋症, iPS細胞, 細胞周期
【背景】近年、HOIL-1L異常症が拡張型心筋症や骨格筋障害の一因として報告されている。HOIL-1Lは生体内においてLUBAC(Linear ubiquitin chain assembly complex)と呼ばれる複合体の一部として主にNF-κB活性化に関わり、免疫応答や炎症に関わることが示唆されている。そのため、HOIL-1L異常症においては免疫不全様の症状や自己炎症疾患様の症状が臨床的にみられるが、それと同時にほとんどの症例で心筋症・骨格筋症を発症しており、特に心筋症は致命的な表現型となる。しかしながら、心筋症発症のメカニズムは全く不明である。【目的】患者由来のiPS細胞を用い、HOIL-1L異常症における心筋症発症のメカニズムを解明すること。【方法】患者由来iPS細胞、HOIL-1L KO iPS細胞から心筋分化を行い、形態評価、成熟度に影響する細胞内マーカーや細胞周期などについて評価した。【結果】患者iPS細胞由来心筋、HOIL-1L KO iPS細胞由来心筋においては心筋細胞の大きさや多核細胞の割合に異常を認め、心筋細胞の成熟分化に異常があると考えられた。また、骨格筋モデルとして使用したマウス筋芽細胞であるC2C12細胞におけるRNAシークエンスの結果を基に、心筋細胞分化過程においての細胞周期を評価した。患者iPS細胞とHOIL-1L KO iPS細胞から分化した心筋細胞ではM期の心筋細胞蓄積が有意に認め細胞周期の変化が一部の細胞で起こっていることが判明した。【考察】HOIL-1L異常症における細胞周期制御を介した心筋成熟の異常が心筋症発症の原因となっている可能性が示唆された。【結語】今回の研究結果は、HOIL-1L異常症だけでなく他の遺伝性拡張型心筋症のメカニズム解明にも繋がる可能性がある。