[III-OR28-04] マウス多能性幹細胞由来心筋細胞とアデノ随伴ウイルスを用いた拘束型心筋症の疾患モデリング
キーワード:拘束型心筋症, アデノ随伴ウイルス, 多能性幹細胞由来の心筋細胞
【背景】我々は拘束型心筋症の乳児患者からサルコメア遺伝子の一つであるトロポニンI(TNNI3)の新規遺伝子変異を同定した。疾患モデリングのツールとして多能性幹細胞由来の心筋細胞(PSC-CMs)が使用されているが、一般的にサルコメアの描出はできない。そこで、我々はマウスPSC-CMsのサルコメアを蛍光標識し、サルコメア機能を評価する手法を開発した。また、PSC-CMsは未熟でTNNI3の発現が低いため、アデノ随伴ウイルス(adeno-associated virus: AAV)による遺伝子導入を考案した。【目的】AAVとマウスPSC-CMsによる新たな疾患モデリング法を開発し、新規遺伝子変異とサルコメア機能との関連を評価する。【方法】サルコメアが蛍光標識されたマウスPSC-CMsへAAVを用いて野生型または変異型TNNI3を導入した。収縮能は収縮開始から終了までの時間、弛緩能は収縮末期から70%弛緩するまでの時間で評価した。【結果】AAVで導入した野生型および変異型TNNI3は、サルコメアに局在して発現することが確認できた。弛緩時間は、AAVで遺伝子導入をしないマウスPSC-CMs(対照群)では0.11±0.03秒、野生型TNNI3を導入した群では0.14±0.05秒と差はなかったが、変異型TNNI3を導入した群では0.17±0.07秒と延長した。収縮時間は3群間で差はなかった。【考察】弛緩障害は拘束型心筋症の表現型であり、今回、新規TNNI3変異とサルコメア弛緩障害との関連を明らかにした。また、AAVとマウスPSC-CMsを用いる新たな疾患モデリング法により変異遺伝子の機能評価が可能であることが示唆された。今後、他の心筋症関連遺伝子変異ついてもサルコメア機能評価が可能かを確認することで、心筋症のin vitroでの疾患モデリング法の確立、病態解明や新規治療法開発につながりうる。