The 58th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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一般口演

心血管発生・基礎研究

一般口演28(III-OR28)
心血管発生・基礎研究

Sat. Jul 23, 2022 9:30 AM - 10:20 AM 第5会場 (中ホールB)

座長:上砂 光裕(日本医科大学多摩永山病院 小児科)
座長:土橋 隆俊(川崎市立川崎病院)

[III-OR28-05] ZC4H2機能喪失は遺伝子Xの発現調節を介して徐脈性不整脈を呈する~プロテオーム解析を用いた遺伝性不整脈の機能解析~

山本 英範, 郷 清貴, 森本 美仁, 深澤 佳絵, 加藤 太一 (名古屋大学大学院医学系研究科 小児科学)

Keywords:遺伝性不整脈, プロテオーム解析, ZC4H2

【緒言】
生後早期に高度徐脈性不整脈を呈したWieacker-Wolff症候群(WWS)を経験した。WWSはZC4H2の機能喪失に由来するが、不整脈の発症機序は不明である。
単一遺伝子異常に由来する心疾患の機能解析は、「モデル動物が致死的」、「心筋由来細胞の培養の難しさ」等の理由でしばしば困難である。我々は従来よりHEK293T細胞を用いたプロテオーム解析により比較的安価、短時間、簡易に機能解析実験を行っている。このたびHEK293T細胞に対するノックダウン実験でZC4H2の機能解析を行った。
【症例】
在胎37週、体重2146gで他院出生した男児。先天性多関節拘縮の治療目的に当院NICUへ転院したが、転院後に高度な徐脈性不整脈が頻繁に認められ、洞機能不全、房室ブロックと診断された。その他の合併症として、気管軟化、鼠径ヘルニア、停留精巣、脳室拡大などが認められたため、臨床的にWWSが疑われた。患者DNAに対するPCR法ではZC4H2の全エクソンにおいて核酸が増幅されず、アレイCGH法でZC4H2の全領域欠失が確認された。母に軽度関節拘縮が認められており、MLPA法でZC4H2欠失の保因者であることが確認された。
【方法】
HEK293T細胞にsiRNA(ZC4H2特異的またはnegative control)をトランスフェクションした後に、RT-PCR法でノックダウン効率を確認し、さらに総蛋白抽出・プロテオーム解析を行った(各群n=3)。不整脈関連蛋白(MeSH enrichment analysis, p<0.05)のうち、コントロール群と比して統計学的有意な変動を呈した蛋白を選出した。
【結果】
ZC4H2発現は約14%に抑制された。プロテオーム解析で測定された5727蛋白のうち、統計学的有意な変動を呈した不整脈関連蛋白ではINSと蛋白Xのみであった。
【考察】
遺伝子Xはその変異により、WWSと同様に洞機能不全や房室ブロックなどの徐脈性不整脈を呈することが報告されている。WWSにおける不整脈は、ZC4H2の機能喪失により遺伝子Xが発現調節されて発症する可能性が示唆された。