[III-OR29-03] 環軸椎回旋位固定を発症した急性期川崎病患者の臨床的特徴
キーワード:AARF, 川崎病, 冠動脈後遺症
目的:急性期川崎病患者に稀ではあるが、環軸椎回旋位固定(Atlanto-axial rotatory fixation (AARF))を合併することがある。AARFは早期診断と早期介入が重要であり、診断の遅れは神経学的後遺症につながるおそれがあると報告されている。しかし、川崎病に合併したAARFの報告数は少なく、その臨床的特徴や経過は不明である。本研究の目的は、厚生労働科学研究DPC調査研究班データベースを用いて、AARFを伴う川崎病の臨床的特徴および治療経過を検討した。方法:2010年7月から2020年3月までにIVIG治療を受けた川崎病患者およびAARFを合併した患者を特定した。AARFを合併した川崎病患者の臨床的特徴および、ロジスティック回帰分析による多変量解析でそのリスク因子を評価した。またAARFと冠動脈後遺症とIVIG不応の割合、入院期間、医療費との関連について検討した。結果:川崎病患者71913人を同定し、そのうちAARF合併群118例、AARF非合併群71795例であった。単変量解析ではAARF合併群で、高年齢、体重が大きい、IVIG投与病日が遅い、不全型川崎病の割合が多かった。多変量解析では高年齢(Odds ratio 1.22, 95 %CI 1.16-1.28)と不全型川崎病(Odds ratio 2.05 , 95 %CI 1.11-3.9)がAARFのリスク因子であった.また多変量解析の結果、AARFは冠動脈後遺症(Odds ratio 0.67, 95 %CI 0.17-2.75), IVIG不応(Odds ratio 1.07, 95 %CI 0.71-1.6)、および医療費(Coefficient 42035円、95 %CI -40800-124800)のリスク因子ではなかったが、入院期間は長かった(Coefficient 1.6 day, 95 %CI 0.1-3.1).結論:急性期の川崎病患者のAARFは稀な病態であるが、高年齢、不全型川崎病で頸部症状を認めた場合にはAARFを考慮する必要がある。