[III-OR29-05] 川崎病患者における呼吸器系ウィルス感染についての検討
キーワード:川崎病, ウィルス感染, 冠動脈瘤
【背景】第26回川崎病全国調査ではSARS-Co-V-2のパンデミックに伴い、2020年の患者数は前年比35.6%の減少が報告された。FilmArrayはSARS-Co-V-2を含む呼吸器系ウィルス21種類を網羅的に検出するPCR検査である。当科では、院内感染防止のために川崎病(KD)を含む、発熱、呼吸器症状を有する入院患者全員にFilmArrayを行っている。【目的】KD患者の呼吸器系ウィルスの罹患状況を調べ、他の入院患者(non-KD)と比較することで病因論としてのウィルス説を検証する。【対象】2021/1/10~12/31に入院したKD群53名とnon-KD群538名を対象。【方法】全例にFilmArrayを行った。【結果】3回の緊急事態宣言後でKD患者数は減少することを繰り返した。FilmArrayでKD群では39名(58.5%)が陽性であった。KD群とnon-KD群各々、ヒトライノ/エンテロ陽性が26名(49.1%)と225名(41.8%)、アデノ(ADV)が2名(3.8%)と47名(8.7%)、パラインフルエンザ3型(PIV3)が6名(11.3%)と74名(15.0%)、4型(PIV4)が1名(1.9%)と18名(3.3%)、ヒトコロナOC43 が1名(1.9%)と27名(5.0%)、NL63が 1名(1.9%)と24名(4.4%)、RS(RSV)2名(3.8%)と126名(23.4%)であった。RSを除くと両群とも同様の分布であった。【考察】緊急事態宣言後で感染症のリスクが減るとKD患者も減少しており、病因論としてのウィルス説を裏付ける同行が確認された。KD患者におけるADV、PIV、RSV、インフルエンザの合併率は8.8%との報告があるが、今回は同ウィルスのみに限っても12.8%が陽性であり、FilmArrayにより更に多種類に広げると58.5%が陽性であることから、既知の報告より多くのKD患者がウィルスに罹患していることが分かった。一方で、同時期のnon-KD患者と比較して同定ウィルスの種類や分布がほぼ同様、かつ多種類であったことから、病因が特定のウィルスで決定されるものではなく、感染がKD発症に脆弱な素因がある患者のトリガーとなっているにすぎないことも示唆された。