[III-OR30-05] 補助人工心臓管理を要した冠動脈バイパス術後の川崎病後巨大冠動脈瘤の1例
Keywords:川崎病性冠動脈瘤, CABG, 心臓移植
【背景】川崎病の後遺症である巨大冠動脈瘤の発生頻度は0.13%、心筋梗塞は0.01%と報告されているが、重症心不全を合併する症例は極めて稀である。補助人工心臓(VAD)管理を要し心臓移植適応と承認された、冠動脈バイパス術(CABG)後の川崎病後冠動脈瘤の女児を経験したので報告する。【症例】生後3ヵ月時に原因不明の発熱で入院した(川崎病と考えられるが、γグロブリン等の治療は行われなかった)。2歳時に活気不良・嘔吐・呼吸苦で緊急入院した。心エコーではLVEF17 %と低下し、重度僧帽弁閉鎖不全を認めた。造影CTでは左冠動脈主幹部に巨大冠動脈瘤及び完全閉塞を認め、右冠動脈から左冠動脈前下行枝(LAD)及び回旋枝(Cx)への側副血行路が発達しており、川崎病後冠動脈瘤、及び冠動脈閉塞による虚血性心筋症(ICM)と診断した。心筋シンチグラフィーではLADおよびCx領域での心筋viabilityを認めた。β遮断薬やACE阻害薬などの内科的加療を行ったもが改善せず、3歳時にCABGを実施したが、抜管困難、循環作動薬の減量が困難で、CABGから約2か月後に遠心VAD装着術を実施した。後に心臓移植適応を申請し適応と判定された。【考察】本症例ではLADおよびCx領域での心筋viabilityを認めたことを根拠にCABGを行ったが、LAD領域でのviabilityはわずかであった。成人領域では、LVEF35%未満のICMに対するCABGと薬物療法を比較し、平均56か月後の総死亡率に差を認めなかったという報告がある。体格からはon pump・心停止でのCABGとしたが、結果として遠心VAD装着という転帰となった。心臓移植医療が停滞しEXCOR®に限りがある本邦の状況下で、低心機能・低体重の症例に対し、どのタイミングでCABGを行うかは非常に難しい判断となる。