[III-OR31-01] 川崎病血管炎類似マウスモデルにおけるSyk阻害薬2剤の血管炎抑制効果の比較検討
キーワード:川崎病, 動物実験, 血管炎
【背景】近年、川崎病では自然免疫系の病態への関与が注目されている。カンジダ・アルビカンス水溶性多糖画分(CAWS)を用いた川崎病血管炎マウスモデルでは、自然免疫受容体であるデクチン2によるαマンナンの認識が血管炎発症に不可欠である。デクチン2を介したシグナル伝達にはチロシンキナーゼの一種であるspleen tyrosine kinase (Syk)が関与し、本モデルの血管炎発症にはSykの活性化も関与するとの報告がある。現在、数種類のSyk阻害薬が知られているが、実臨床での使用は未だ限定的である。【目的】本モデルにおけるSyk阻害薬2剤の血管炎抑制効果を明らかにする。【材料・方法】CAWS 200μg/日を4週齢、雄性のDBA/2に連続5日間、腹腔内投与し、投与終了後3週間で犠牲死させ心臓を採取した。治療群にはCAWS投与終了翌日からSyk阻害薬を投与した。Syk阻害薬としてR788もしくはGS-9973を使用した。冠動脈を含む心基部大動脈の連続切片を作製し、既報に従い汎血管炎発生率、炎症スコア、炎症範囲を比較した。【結果】R788群、GS-9973群いずれも対照群と比較して汎血管炎発生率、炎症スコアは低下した。R788群では炎症範囲は縮小傾向を示し、GS-9973群では炎症範囲は縮小した。R788群とGS-9973群間の比較では、汎血管炎発生率はGS-9973群がR788群よりも低い傾向にあった。炎症スコアはGS-9973群でR788群よりも低い傾向にあった。炎症範囲はGS-9973群でR788群より縮小した。【考察】Syk阻害薬であるR788とGS-9973はいずれも本モデルにおける血管炎発生を抑制し、炎症の程度を軽減した。Syk阻害薬は血管炎治療薬の新規候補となる可能性があると考えられた。R788と比較してGS-9973はより強力な炎症範囲の縮小効果を示したがその理由については不明であり、今後さらなる検討を要する。