[III-OR31-02] G0S2はLncRNA HSD11B1-AS1を介して川崎病における自然免疫を調節する
キーワード:川崎病, 自然免疫, ノンコーディングRNA
【背景】川崎病(KD)は全身性血管炎であり、現在、小児における後天性心疾患の最も多い原因となっているが、病因は解明されていない。長鎖ノンコーディングRNA(Long non-coding RNA: lncRNA)は、様々な疾患の病態生理に寄与していることが知られ、近年研究が行われているが、KDの炎症におけるlncRNAの役割について報告した研究はほとんどない。【目的】KDの炎症において自然免疫に関与するlncRNA・mRNAの役割を明らかにすること。【方法】対照患者50名およびKD患者50名(年齢中央値19ヶ月、男性29名、女性21名)のIVIG治療前後の末梢血からMagnetic cell sortingを用いて単球を分離し、RNAを抽出した。キャップ解析遺伝子発現配列決定(CAGE-seq)およびリアルタイムPCRを用いてKDで有意に発現する遺伝子を同定し、THP-1細胞を用いて自然免疫における炎症との関連を解析した。【結果】CAGE-seqによりKD特異的に発現変動する21のlncRNAが同定された。これらの遺伝子のうち、HSD11B1-AS1は、KD治療後、非発熱対照群、発熱対照群と比較してKD急性期で有意に発現上昇がみられた(急性期KD vs. 治療後KD: P<0.004; 急性期KD vs.非発熱対照: P<0.0001; 急性期KD vs.発熱対照: P <0.0001)。その相補鎖のcoding gene, G0/G1 switch gene(G0S2)も同様の遺伝子発現パターンを呈していた(急性期 KD vs.非発熱対照: P=0.02; 急性期KD vs. 発熱対照: P=0.002)。THP-1細胞でsiRNAを用いてG0S2をノックダウンしたところHSD11B1-AS1およびTNF-αの発現が抑制された。【考察】本研究で、KD患者の単球の遺伝子発現プロファイルの全貌をCAGE-seqより明らかにし、KDで有意に発現変動する遺伝子を同定した。これらのうちG0S2と HSD11B1-AS1はKD急性期で有意に発現上昇しており、これらがKDにおける自然免疫・炎症を協調して制御している可能性が示唆された。【結論】lncRNAはKDの診断・治療の新しいターゲットとなる可能性がある。