第58回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

外科治療

一般口演32(III-OR32)
外科治療 Ⅰ

2022年7月23日(土) 09:30 〜 10:20 第6会場 (小ホール)

座長:小沼 武司(長野県立こども病院 心臓血管外科)
座長:崔 禎浩(宮城県立こども病院 心臓血管外科)

[III-OR32-03] 左側房室弁低形成症例で二心室修復を目指すための、palliative ASD closureの経験

小坂井 基史1, 村山 弘臣1, 岡田 典隆1, 大沢 拓哉1, 安田 和志2, 河井 悟2, 森鼻 栄治2, 鬼頭 真知子2, 大島 康徳2, 野村 羊示2, 伊藤 諒一2 (1.あいち小児保健医療総合センター 小児心臓病センター 心臓血管外科, 2.あいち小児保健医療総合センター 小児心臓病センター 小児循環器科)

キーワード:borderline left heart, LV rehabilitation, hypo plastic left atrioventricular valve

【背景】左側房室弁低形成 (hypo. LAVV)は、borderline left heartに対する二心室修復(BVR)における risk factorの一つである。近年我々は、hypo. LAVV症例に対して palliative ASD closureを行い、段階的に BVRを目指している。【目的】Palliative ASD closureの短期成績、left heart structure sizeの推移、BVR到達の有無を調査してその有用性と問題点を検証する。【方法】2019年1月から2022年1月に palliative ASD closureを施行したhypo. LAVV症例 6例を対象とした。【結果】手術時月齢は中央値で 10.2 (IQR 8.5 - 11.5) ヶ月、手術時平均体重は 6.99 ± 0.78 kgであった。主診断はcAVSD 2例、cAVSD + DORV 2例、DORV 1例、iAVSD 1例であった。初回手術が2例、既往手術はPA banding 4例、AVSD repair 1例、BVR takedown 1例であった。 術前のLAVV弁輪径 68.8 (IQR 66.3 - 73.8) % of normal、Z-scoreで-4.08 (IQR -4.49 - -3.32)、 LVDd 78.0 (73.9 - 86.9) % of normal、LVEDV 123.3 (IQR 106.5 - 137.6) % of normal, 大動脈弁弁輪径100.3 (IQR 90.6 - 109.8)% of normalであった。全例 fenestrationを置かずにASDを完全閉鎖した。併施手技はcommon AVV septation 4件、LAVV形成 3件、右側房室弁形成 1件、 PA banding 4件、BT shunt 1件であった。在院期間は 26日、ICU滞在期間は 10日であった。観察期間は 23.7 (IQR 7.6 - 31.2)ヶ月で死亡なし。術後LAVV弁輪径と左室容積は有意に増加し、4例 66.7%がBVRに到達した。【結論】少ない症例数ながら、良好な成績であった。まだBVRに到達していない直近の2例は LAVV弁輪径 Z-scoreが 術前 -5.57, -4.58、術後 -3.86, -3.00と他の症例よりも小さく、今後の推移を慎重に観察する必要がある。またpalliative ASD closure後にLAVVRが残存/増悪する症例があり、その長期予後も注意が必要である。