[III-OR32-05] 第4大動脈弓離断・第5大動脈弓遺残兼縮窄の5手術例
Keywords:第4大動脈弓離断・第5大動脈弓遺残兼縮窄, Blalock-Park法(Double-Arch法), 鎖骨下動脈フラップ法
【背景】第5大動脈弓遺残は胎児早期に消失する第5大動脈弓が出生後も遺残する稀な先天性血管異常である。第5大動脈弓は消退する可能性のある血管であることから、本疾患では、第5大動脈弓を利用する術式では術後の狭窄が危惧されている。【症例】1997年5月から2022年2月に当院で第5大動脈弓遺残を認めた症例は8例で、そのうち第4大動脈弓離断・第5大動脈弓遺残兼縮窄で手術を要したのは5例であった。手術時日齢は9~97日 (中央値 72日)、手術時体重は2.6~5.8kg (中央値 4.8kg)、観察期間は3~106ヶ月 (中央値 44ヶ月)で、大動脈弓離断 Type Aが3例、大動脈弓離断 Type Bが2例であった。手術方法は5例とも左側開胸、単純遮断で行い、Type A 3例のうち、拡大大動脈弓形成が1例、Blalock-Park法(Double-Arch法)が2例であり、Type B 2例には鎖骨下動脈フラップ法を行った。術前に痙攣や腎機能障害などで人工心肺使用に懸念があった症例は3例であった。術後1年のカテーテル検査を4例に施行し,術前の痙攣によりCPB使用を回避し,中枢側の成長不良による狭窄が懸念されていたType B 1例(鎖骨下動脈フラップ法)で第5大動脈弓の成長不良による狭窄を認め,経皮的血管形成術後に自己心膜を用いたパッチ形成術を施行した。術後の経過は良好で、再狭窄や瘤化は認めていない。また4例の術後中期の心臓超音波検査では吻合部のフローは1.3-1.7m/sec (中央値 1.6m/sec)で良好であった。【考察・結論】第4大動脈弓離断・第5大動脈弓遺残兼縮窄の術後における再手術率は明らかではない。今回、4例で第5大動脈弓を利用したが,当初より危惧された1例で再手術を要した。第5大動脈弓を利用しないことが望ましいが、様々な理由で利用した場合でも、Blalock-Park法(Double-Arch法)、鎖骨下動脈フラップ法も選択肢の1つになると考えられた.