[III-OR34-03] 小児循環器診療における遠隔診断の有用性:専門医の効率的配置と地域医療の両立
キーワード:遠隔診断, 複雑心奇形, 不整脈
背景:コロナ禍により在宅勤務や学会・研究会のオンライン開催等、物理的距離に影響を受けないコミュニケーションを推奨する動きが加速しており、現行の岩手県医療体制はこの先進モデルとなる可能性がある。方法:岩手県は四国四県に相当する県土を有し、コロナ禍以前から大学病院と県内9つの県立病院、5つの関連中核施設間をVPNネットワークで繋ぎ、診断および治療方針について相互共有・検討ができるインフラを構築している。これにより効率よく重症疾患を大学病院に集積し、地域中核病院でも重症疾患の適切なトリアージが可能となった。迅速な判断と治療が極めて重要な小児循環器領域ではこのシステムの幅広い応用が可能であり、これまでの経験を総括する。結果:先天性心疾患が疑われる症例では、一般小児科医が現地で超音波装置を当てながら新生児科医や小児循環器医の指示により画像を描出し、心臓血管外科医を含めた先天性心疾患医療チームで議論して方針を決定した。このシステムが構築された2012年以降、出生前診断で検出されなかった県内の重症先天性心疾患はほぼすべてが発症前にトリアージを受け、大学または関連施設に搬送できた。また非緊急性先天性心疾患やキアリ網による心房間右左短絡、心臓腫瘍等早期介入を要さない症例は搬送を回避し、地域での管理を継続した。不整脈疾患では、地域小児科医に指示して遠隔で抗不整脈薬や電気的除細動による治療を行い、安定した循環での搬送や地域での継続加療を行った。結論:VPN接続を用いた閉鎖的ネットワークによる遠隔診断システムは個人情報が漏洩するリスクがなく、複数の医療機関があたかも一つの医療機関であるかのように機能する。本システムの確立により、北関東以北最大水準となる単一施設内小児循環器専門医5名が大学で専門的医療に従事し、一方で広域に分布する中核施設の遠隔診断・治療、地域一般小児科医の教育等複数の役割を担うことが可能となる。