第58回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患

一般口演35(III-OR35)
肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患 II

2022年7月23日(土) 08:30 〜 09:20 第7会場 (ルーム204)

座長:岸 勘太(大阪医科薬科大学病院 小児科)
座長:安田 和志(あいち小児保健医療総合センター 循環器科)

[III-OR35-01] 特異な肺動脈病理所見を呈した糖原病1b型剖検例

峰松 伸弥, 田代 克弥 (唐津赤十字病院)

キーワード:肺高血圧症, 糖原病, 慢性血栓塞栓性肺高血圧症

【背景】肺高血圧症の分類で糖原病(Glycogen Storage Disease:GSD)は第5群に記載されている。しかしGSD自体が稀な疾患である上、肺高血圧を呈する頻度は多くなく肺血管病変の詳細な病理学的検討をされたものは更に少ない。報告の多くはGSD1a型 であり、類似した病態を呈するG6P translocaseの異常であるGSD1b型での肺高血圧についての報告は見出しえなかった。我々はGSD1b型で肺高血圧を合併した症例を経験した。【症例】12歳女子。生後1か月過ぎに肝障害と低血糖を契機にGSD1b 型の診断に至り、頻回の糖補充・デンプン摂取を行いつつ外来管理されていた。10歳を過ぎて多呼吸・易疲労感を契機に心不全と診断され、精査で肺高血圧が見つかった。心臓カテーテル検査では肺動脈圧 77/47(57)mmHg、平均左房楔入圧 10mmHg 、肺血管抵抗 25.4woodであり、肺動脈性高血圧と診断した。GSD1a型での報告を参考に特発性肺動脈性肺高血圧(IPAH)に準じてEpoprostenol・Sildenafil・Beraprost等で治療を行った。Epoprostenolは50ng/kg/minまで増量したが治療への反応は不良で、約2年間の治療後心不全悪化で死亡した。剖検では、右室は著明に拡大し右室壁肥厚を認めた。一方肺動脈はIPAHとは異なり、内膜の肥厚は軽微であり線維性沈着物による狭窄・閉塞を示していた。これについては日本肺血管研究所からChronic thromboembolic pulmonary hypertensionの診断を受けた。GSDにおける肺血管病変についてこのような報告はなく、特異な症例と思われる。自験のIPAH・Eisenmenger症候群の肺血管病変との違いを交えて提示しつつ本症例の血管病変の特徴について報告する。