[III-OR35-02] BMPR2変異は肺高血圧標的治療薬の効果に影響するか? 変異ラットを用いた検討
キーワード:肺高血圧, 動物モデル, 遺伝子変異
【背景】 骨形成因子2型受容体(BMPR2)変異は、肺動脈性肺高血圧(PAH)の主要な遺伝的危険因子と理解されている。臨床的に、BMPR2変異のあるPAH患者は、発症が早く予後が不良、また治療への反応が低いことが示されている。近年CRISPR/Cas9などゲノム編集の導入により、比較的容易にラットに遺伝子変異を導入できるようになり、マウスでは再現困難な、進行性のPHモデルでの遺伝子変異の意義の検討が可能となった。【仮説】 Bmpr2変異は、PDEtype5阻害剤、tadalafil治療下でモノクロタリン(MCT)誘発ラットPHの生存を悪化させる。【方法】Bmpr2遺伝子変異をCRISPR/Cas9により導入し、野生型ラットと交配し、挿入欠損を確認し変異型(+/-)とし、野生型(WT)同腹仔と比較した。7週齢のWTと(+/-)にMCT,(60mg/kg)を皮下投与し、投与後2週からtadalafil(10mg/kg、1日1回)を投与し、MCT投与後4週、6週での肺動脈圧、右室肥大(RV/[LV+S])、肺血管病変(PVD)、生存率の解析を行った。【結果】(+/-)ラットでは、Bmpr2遺伝子に1塩基挿入によるミスセンス変異が確認された。 MCT投与後4週の検討では、無治療群では(+/-)の生存率が低かった(p<0.05)が、tadalafil治療下でWTと(+/-)ラットの生存率は同等であった。tadalafil治療群の、MCT投与後6週での生存率は(+/-)で低く(p<0.05)、PVDは高度であった。(+/-)ではWTに比べ高度の右室心筋線維化を認めた(p<0.05)。【結語】MCT-PHラット生存期間をTadalafilにより延長した場合、Bmpr2変異ラットでは血管病変に加え右室心筋障害が悪化した。PH治療における右心不全治療の重要性を示唆する結果と考えた。