[III-OR35-03] 門脈肺高血圧患者の肝移植後の肺高血圧改善機序について
キーワード:門脈肺高血圧, 肝移植, 全身血管抵抗
【はじめに】肺高血圧治療薬の開発により内服や在宅持続点滴で管理可能な門脈肺高血圧患者が増加してきている。しかしながら、門脈肺高血圧の根本的な治療は肝移植である。【目的】当院で肝移植を施行した門脈肺高血圧患者で前後検査データ(血液、心エコー、心臓カテーテル)を有する12症例(再移植を含む)を解析し、肝移植による門脈肺高血圧改善機序を解明する。【結果】肝移植によりAST, γGTP、ChE、Alb、NH3、総胆汁酸値の正常化、ヘマトクリット値の安定化、PT-INR, APTT値の低下を有意に認めた。平均肺動脈圧は初回検査時に44.1±8.1mmHgであったが、移植直前は35.3±7.8mmHg、移植半年後 29.5±9.3mmHgと有意に低下し、その後2年以上にわたって悪化を認めなかった。この肺動脈圧低下について評価したところ、肺血管抵抗値の低下というよりは有意な心係数低下(移植前 7.6±3.1L/min/m2、移植半年後 5.2±1.5L/min/m2)の影響と考えられた。心係数の低下について詳細に検討した。心エコーデータでの左室拡張末期径、心拍数、左室駆出率いずれも移植後 緩やかに低下する傾向があった。全身血管抵抗は移植前 12.2±4.4U・m2と低値であったが、移植1年後に15.1±4.8 U・m2、移植2年後に18.7±4.3 U・m2と有意に上昇した。【考察】以上の結果から、肝移植による肺動脈圧の低下の一因は、全身血管抵抗上昇(正常化)を伴った高心拍出血行動態が改善する結果と考えられた。肝移植により肝機能は改善するものの、肺血管抵抗低下を伴った肺高血圧改善、更には肺高血圧治療薬の漸減中止には時間がかかると考えられた。