[III-OR35-04] 小児期発症の重症特発性/遺伝性肺動脈性肺高血圧症に対する高用量epoprostenolの有効性の検討
キーワード:I/HPAH, 高用量epoprostenol, 有効性
【背景】成人領域では重症特発性/遺伝性肺動脈性肺高血圧症(I/HPAH)に対する高用量epoprostenol(Epo)の有効性が報告されているが、小児期発症例での報告は少ない。【目的と方法】15歳未満で発症したI/HPAHのうちEpo 40ng/kg/min(Epo40)を超えて増量を行った症例について、“有効性”、“Epo40時と最大投与量時の血行動態指標の比較”、“Epo40から最大投与量までの間で発生した有害事象”を後方視的に検討した。有効性については、Epo40から最大投与量への増量によりmean Pp/Ps(mPp/Ps)が20%以上低下かつ平均肺動脈圧(mPAP)が35mmHg以下へ低下したものを有効とした。【結果】症例は4例(男性2例/女性2例、IPAH2例/HPAP2例)で、診断時、年齢11.9±2.0歳、mPAP 75.0±16.2mmHg、肺血管抵抗係数37.6±12.8Wood・m2であった。診断からEpo導入の期間は0.3~2.4年(中央値 1.3年)、最大投与量は79~103ng/kg/min(中央値 90.5ng/kg/min)、Epo40から最大投与量に至る期間は1.4~3.0年(中央値 1.7年)であった。Epo40からの増量が有効だったのは2例で、それぞれのmPp/Ps変化率と増量後mPAPは、-28.4%/34mmHg、-45.5%/32mmHg、残りの2例のmPp/Ps変化率と増量後mPAPは+28.9%/60mmHg, -18.0%/59mmHgであった。Epo40時と最大投与量時の比較では、心拍出量は全例で低下(4.80±0.89→3.73±0.22 l/min/m2)、左室拡張末期圧は全例で増加(9.3±2.5→13.5±1.7mmHg)していた。増量が有効でなかった2例は、増量中に心拡大、心嚢水貯留を認め、最大投与量時の評価で改善がないことを確認した後にEpoの減量と利尿剤の追加を行った。【考察】小児期発症I/HPAHにおいても高用量Epoが有効な症例は存在するが、効果が乏しい症例では有害事象が顕著であった。今回の検討の中で両者を特徴づける臨床所見は見いだせなかった。小児期発症のI/HPAHに対する高用量Epoの投与にあたっては症例毎に慎重な有効性と有害事象評価が必要である。