[III-OR36-04] 小児開心術での目標指向型体外循環管理に必要な指標の後方視的検討
Keywords:小児開心術, CPB, GDP
【目的】人工心肺 (CPB) 中の組織低酸素とそれに伴う乳酸値上昇を回避するため, 酸素需給バランスに関わるパラメーターを積極的に是正する目標指向型体外循環管理 (GDP) が成人領域では提唱されているが, 小児領域では目標とする指標が未だ明確でない. その目標確立に向けて, 本研究では小児GDPに有用と考えられるパラメーター (GDPパラメーター) と乳酸値上昇との関連を後方視的に検討した. 【方法】当院にて2016-2020年で15歳未満 (新生児除く) に行われた非チアノーゼ性心疾患への開心術を,CPB中乳酸値が2mmol/L未満だったL群と2mmol/L以上だったH群に群分けし, 患者背景, 手術内容, GDPパラメーター, 術後データを網羅的に比較した. さらに患者背景と手術内容で傾向スコアマッチングしGDPパラメーターを比較した. 数値は中央値で表記した.【結果】対象は227例. L群が193例, H群が34例であった. マッチング前でGDPパラメーターではO2ER (%, L群17, H群16, p=0.008), VCO2I (mL/min/m2, L群59, H群97, p<0.001), P(v-a)CO2 (mmHg, L群12, H群15, p=0.013), P(v-a)CO2/C(a-v)O2 (L群4.0, H群5.6, p=0.001) に, 術後データではICU入室直後乳酸値 (mmol/L, L群1.6, H群2.5, p<0.001) と人工呼吸器管理期間 (日, L群2, H群2, p=0.041) に有意な差を認めた. マッチング後 (L群34例, H群34例) はDO2I (mL/min/m2, L群397, H群352, p=0.016), P(v-a)CO2 (mmHg, L群11, H群15, p=0.043), P(v-a)CO2/C(a-v)O2 (L群4.2, H群5.6, p=0.026) に有意な差を認め, 術中リアルタイムで測定可能なDO2IのROC曲線によるカットオフ値は389 mL/min/m2であった.【考察】アウトカムを乳酸値だけとした後方視的検討であるが、小児GDPにおいてはDO2I 389 mL/min/m2が目標指標として有用で, P(v-a)CO2およびP(v-a)CO2/C(a-v)O2も参考にすべきと考えられた。