[III-P6-1-02] 胎児期から観察し得た大動脈縮窄を合併したEbstein病の1例
キーワード:Ebstein病, 大動脈縮窄, 大動脈二尖弁
【緒言】Ebstein病は先天性心疾患の1%を占め, 合併疾患として心房中隔欠損や肺動脈狭窄が認められる.一方,左心系の異常の合併は少なく, 特に大動脈縮窄(CoA)の合併の報告は極めて稀である. 今回Ebstein病にCoAを合併した症例を経験したため報告する.【症例】母体33歳. 妊娠29週時にFGR認め, 当院に紹介された. 妊娠30週時の胎児心エコーで, Ebstein病,左心系低形成(LV width Zscore -3.78), 軽度大動脈低形成(上行大動脈径 Zscore-2.86), 中等度三尖弁逆流と診断した.Celermajer Score Grade2で動脈管血流は順向性であった. 大動脈弁狭窄,CoAは認めなかった. 妊娠36週時の胎児心エコーでTRの増悪なく, Celermajer scoreはGrade2で進行を認めなかった. 大動脈峡部は3.0mm(Zscore -2.9)と狭小化を認め, CoAを疑った. 在胎38週4日, 予定帝王切開で出生した. 女児, 出生体重 2082gで出生後の心エコーでEbstein病, 軽度三尖弁逆流, 機能的大動脈二尖弁と診断した. 大動脈峡部は2.0mmで血圧の上下肢差が16mmHg認められた. 日齢1に動脈管の狭小化に伴い, CoAが顕在化し, 上下肢の血圧差が31mmHgに開大したため, プロスタグランジン製剤の投与を開始した. 日齢2に大動脈弓修復術を施行した. 術後経過は良好で, 三尖弁逆流の増悪やCoAの再発なく経過している.【考察】Ebstein病に左心系の異常を合併した報告は少ない. 僧帽弁や大動脈弁,肺静脈の異常などの報告がわずかに認められるが,それらが臨床的に問題となることは稀である. その中でCoAの合併の報告は極めて稀である. 本症は初回胎児心エコーで左心系低形成を認め, 最終胎児心エコー時に大動脈峡部低形成が進行していた. 出生時心エコーで大動脈二尖弁合併も判明し, CoAに留意して観察, 時期を逸せず手術とし, 良好な経過を得た. Ebstein病のCoA合併例では大動脈二尖弁の合併が散見され,文献的考察を加え報告する.