[III-P6-1-04] IVC欠損を伴った単心室患者におけるTCPC術後合併症の発生率と治療~肺動静脈瘻は改善しうるか~
キーワード:IVC欠損, TCPC術後, 肺動静脈瘻
【背景と目的】IVC欠損を伴ったTCPC術後患者の重要な合併症として肺動静脈瘻があるが、その頻度や適切な管理についてはまだ十分なデータがない。今回は自験例の調査からその発生率や治療の有効性について検討する。【方法】過去30年間に当院で治療したIVC欠損合併のTCPC患者20例について診療録より後方視的に調査した。【結果】症例は20例(男11、女9)でTCPC施行年齢は1.8~10.6歳(中央値: 3.1歳)、TCPC前に両方向性Glenn(TCPS)を行った患者は15例でTCPSからTCPCまでの期間は0.3~2.8年(中央値: 1.8年)であった。TCPC術後の合併症は、肺動静脈瘻9例(45%)、肺動脈狭窄7例(35%)、蛋白漏出性胃腸症1例(5%)、鋳型気管支炎1例(5%)であった。TCPS後に形成された肺動静脈瘻がTCPC術後早期に消失した例は5例であった。フォロー中のSaO2は90%以上が11例、80%以上90%未満が5例、80%未満が4例であった。TCPC後の再手術は7例に行われ、うち4例は肺動静脈瘻改善を目的としたConduit交換もしくは血流転換術であった。再手術後に肺動静脈瘻の改善を認めたのは1例でSaO2 89%から93%に上昇したが、他の3例では明らかな改善がなかった。SaO2 80%未満の4例では経皮的に肺動静脈瘻に対するコイル塞栓も行われたが有意なSaO2上昇は得られず、1例は再手術後7年で死去した。【考察】肺動静脈瘻の治療において経皮的なコイル塞栓の効果は限定的であり、外科的に肺への肝静脈血流の均等な分布を実現することが重要である。ただしExtracardiac conduitの位置だけでなく肺動脈狭窄や奇静脈結合の影響もあり、血流分布の改善は困難な場合も少なくない。【結論】IVC欠損を伴ったTCPC症例では肺動静脈瘻の発症率が高く、desaturationによるQOL低下の原因となるため早期に介入を検討する必要がある。