[III-P6-1-05] 重症左室冠動脈瘻を合併する左心低形成症候群の心形態
Keywords:左心低形成症候群, 左室冠動脈瘻, 左室依存性冠循環
【背景】左心低形成症候群(HLHS)の中で僧帽弁狭窄(MS)・大動脈弁閉鎖(AA)は最も予後が悪く、左室冠動脈瘻(SC)の合併がその要因の一つと考えられる。SC合併・心房中隔欠損(ASD)狭小例はASD拡大時に重大な心イベントを起こすことがあるが、そのような症例の判別方法は報告がない。【目的】HLHS、MSAA症例におけるSCの重症度と関連する因子を明らかにする。【方法】対象は2015年1月~2021年12月に当院で新生児管理を行ったHLHS、MSAA13例のうち、SCを合併し出生後早期にASD拡大を要した9例。心エコーで左室心筋内にモザイクフローがある場合にSC合併とした。ASD拡大時の重大な心イベント発生と、心形態との関連を検討した。【結果】心イベント合併例(C群)は5例(心筋障害2例、一過性房室ブロック2例、上室性頻拍1例)、非合併例(N群)は4例。C群はN群に比べて左室拡張末期径(左室短軸像:9.6mm vs 5.2mm、長軸像:9.0mm vs 5.7mm)、左室拡張末期面積が大きかった(左室短軸像:0.82cm2 vs 0.32cm2、四腔断面像:0.92cm2 vs 0.48cm2)。また、C群の左室は楕円形よりも正円形に近く、四腔断面像収縮期の左室縦/横径は小さいかつ1に近かった(1.15 vs 1.58)。左房面積、ASD流速、上行大動脈径に差はなかった。冠動脈血流方向を評価した7例では、N群は全例順行性血流であった。両方向性・逆行性血流を認めた3例は全てC群で、2例で冠動脈から上行大動脈に吹き込む血流を認めた。【考察】正円に近い大きな左室は高圧であることを示唆し、発生過程でのSCの形成に関連している可能性がある。また冠動脈の異常血流パターンは左室依存性冠循環を反映していると考えられる。【結論】正円に近く大きな左室形態は左室依存性冠循環の存在を示唆している可能性があり、冠動脈血流の評価が重要である。