[III-P6-2-08] Fontan術後早期に多発性限局性結節性過形成と肝肺症候群を伴う症候性門脈体循環短絡症により心不全を呈した多脾症候群
キーワード:Fontan, 門脈体循環シャント, 肝腫瘍
【背景】先天的に門脈体循環短絡(PSS)を持つ症例にFontan手術が施行された場合、中心静脈圧(CVP)上昇に伴いPSSが症候化し早期Fontan循環不全に陥るリスクがある。Fontan術後の心不全悪化を契機に多発性限局性結節性過形成(FNH)と高度肝線維化、肝肺症候群を認めた症例の短絡血管閉鎖前後の経過を報告する。【症例】8歳女児。多脾症候群、両大血管右室起始症、重症三尖弁閉鎖不全症(TR)、下大静脈欠損・奇静脈結合と診断。新生児期は重度TRによる心不全管理に難渋し生後5か月で三尖弁形成術施行。1歳7か月にTotal Cavopulmonary Shunt、2歳時にFontan術を施行。6歳頃からチアノーゼの悪化、心拡大、房室弁逆流の進行とBNP上昇を認めた。心臓カテーテル検査ではCVP 13mmHg、肝静脈楔入圧13mmHg、心係数5.6L/min/m2、体血管抵抗6.6 Wood unit・m2、肺動静脈瘻による短絡率は33%であった。造影MRI検査で多発性FNH、肝実質障害と奇静脈に合流するPSSを指摘された。高アンモニア血症と肝シンチグラフィーで肝予備能低下を呈しておりPSSによる肝肺症候群及び高心拍出性心不全と判断した。このPSSはFontan術前は短絡血管4mmと細く無症候性であった。カテーテルでの短絡血管8.6mmに対して閉鎖試験を行い、門脈圧と肝内門脈を確認した。肝生検では類洞拡張と線維化を主体として門脈域の線維化拡大も呈していたが門脈低形成は否定的であり短絡血管をvascular plugで閉鎖した。閉鎖半年後の造影MRIではFNHは縮小減少し、肝シンチグラフィーでも肝予備能はわずかに改善傾向であった。しかし、心不全、チアノーゼ、高アンモニア血症は残存するため今後心臓カテーテル検査を再検予定である。【まとめ】Fontan術後のチアノーゼや心不全出現時には症候化したPSSについて精査を行う必要がある。内臓錯位症候群など腹部血管異常を伴う症例はPSSの有無についてFontan術前に積極的な検索を考慮すべきである。