[III-P6-2-09] フォンタン術後早期の肝胆道系酵素異常に関連する因子の検討
キーワード:フォンタン関連肝疾患, フォンタン, 肝機能障害
【背景】フォンタン関連肝疾患(FALD)の主因は高い中心静脈圧(CVP)であり、術後早期からの影響が報告されているが、リスクとなる患者背景は明らかでない。【目的】フォンタン(F)術後早期にみられるγGTPを指標としたFALDに関連する因子を明らかにすること。【対象・方法】2015~2021年にF術ならびに術後カテを施行した症例のうち、F術後期間が120-240日であった218例を対象とした。γGTP値(U/L)が50以上の高値群(H群:51例:平均86.5)と50未満の低値群(L群:167例:27.7)に分け、血行動態指標ならびに臨床経過を検討した。【結果】H群には左心低形成症候群が多く(H:33.3%, L:10.2%)、新生児期の窒素療法が多かった(H:45.1%, L:25.1%, p<0.01)。初回手術時日齢は有意差なく、グレン(G)術年齢(歳)(H:1.4, L:1.1, p<0.01)と、F術年齢(歳)(H:3.9, L:3.4, p<0.01)はH群で高かったが、G術からF術期間は有意差なかった。総人工心肺時間(分)はH群で長く(H:432, L:330, p<0.01)、循環不全イベントはH群に多かった(H:31.4%, L:13.2%, p<0.01)。H群ではF術からカテ期間(日)が長く(H:199, L:190, p<0.01)、CVP(mmHg)は高く(H:10.1, L:8.6, p<0.01)、心拍出量(L/min/kg)は低かった(H:2.9, L:3.1, p<0.01)。カテ時のAST、ALT、IV型コラーゲン、総胆汁酸はH群で高く、血小板数は低かった。F術前のγGTPと総ビリルビンはH群で有意に上昇していたが、両群ともに正常範囲であった。多変量解析では、カテ時年齢・総人工心肺時間・循環不全イベント・高中心静脈圧・低心拍出量がリスク因子であった。最終受診時のγGTPはH群では86.4%が50以上のまま、L群では77.9%が50未満のままであった。【まとめ】F術後早期から高CVP・低心拍出というフォンタン循環が肝臓へ影響していた。さらにF術前の不安定な血行動態による潜在的な肝障害がFALDに影響する可能性もあり、重症例ではより慎重な管理が望まれる。