[III-P6-2-10] Fontan術後遠隔期に肝細胞癌を合併した症例
Keywords:TCPC, 遠隔期合併症, 肝細胞癌
症例は24歳 男性(TCPC後19年)。修正大血管転位、右室低形成、肺動脈閉鎖、右側大動脈弓、左上大静脈遺残に対して2003年(5歳時)にTCPC(extracardiac conduit 18mm ePTFE)を施行された。外来ではSpO2 90%前半で経過し、心臓エコー検査ではEF 70%台、房室弁逆流はごく少量であった。2012年(TCPC後9年)の腹部エコー検査では慢性肝障害の所見を認めたが、肝萎縮や肝臓内に腫瘤性病変は見られなかった。また、血液検査でも肝逸脱酵素や肝線維化マーカーの上昇は認めなかった。20歳までの経過は大きな問題なく2018年に成人施設に紹介となった。その後徐々にSpO2が低下したため2020年に心臓カテーテル検査を行ったところFontan導管の石灰化・狭窄に伴う静脈シャントの増加を認めた。導管交換が検討され手術適応の相談のため2020年に再度当科に紹介となった。2021年3月(TCPC後18年)の腹部エコー検査と2021年6月の腹部造影CT検査では肝実質に腫瘤は認めなかった。2021年11月の心臓カテーテル検査ではIVC m=12, PAP m=11, Rt.PAWP m=9, Lt.PAWP m=9, LV 109/ EDP 10, Ao 106/69, Rp 0.68, CI 4.4 L/min/m2, SaO2 88.6%, 導管内の石灰化・狭窄は強くIVCからRt.PVへの静脈シャントが発達していたことから、導管交換を行う方針となった。2021/12の上部消化管内視鏡では食道下部から中部にかけて直線的な細静脈瘤(F1相当), red color sign陰性である食道静脈瘤を認めた。胃表面には静脈瘤は見られず、体上部から中部に門脈圧亢進性胃症と思われる発赤を認めた。またその際の血液検査では肝障害の進行を示唆する所見はなかった。2022年1月にAFPの上昇を認めたことから、腹部MRI検査でS4肝細胞癌 cT1N0M0 cStage1の診断となり腹腔鏡下肝切除を予定された。
TCPC術後の遠隔期の合併症として肝細胞癌が知られているが、小児期に比較的良好な経過を辿っても若年発症例があるため慎重な経過観察が必要である。
TCPC術後の遠隔期の合併症として肝細胞癌が知られているが、小児期に比較的良好な経過を辿っても若年発症例があるため慎重な経過観察が必要である。