[III-P6-2-11] Fontan術後の難治性蛋白漏出性胃腸症に対する経皮的リンパ管塞栓術が無効であった一例
キーワード:Fontan手術, 蛋白漏出性胃腸症, 肝リンパ管塞栓術
【症例】9歳女児。診断は左側相同、両大血管右室起始、下大静脈欠損、半奇静脈接合。2歳3ヶ月でTCPCを施行。3歳2か月、TCPC後約1年で蛋白漏出性胃腸症(以下、PLE)を発症。増悪と寛解を繰り返したが概ね外来通院で管理可能であった。8歳時の心臓カテーテル検査では半奇静脈6mmHg、右肺動脈4mmHg、左肺動脈6mmHg。体静脈圧は低値であったが、右肺動脈に狭窄部がありステントを留置した。9歳、PLEが増悪し毎週アルブミン補充を要した。さらに、肺血管拡張剤を増量したが効果なく、ブデソニド内服にも反応は乏しかった。難治性PLE、リンパ漏の関与を疑いMRリンパ管造影を行ったところ、造影前のT2強調画像で拡張した胸管と肋間リンパ管が確認され、門脈域には広汎に浮腫上変化を認めた。腸肝循環領域に生じたリンパ浮腫を反映した所見と思われた。造影後は腹部大動脈から左右腸骨動脈周囲の軟部組織に造影効果が確認され、リンパ漏の所見と考えられた。既存の治療に反応が乏しいことやMRI所見から、リンパ漏がPLEの主な原因であると考えた。リンパ漏の治療として内視鏡併用にて肝リンパ管塞栓術を行った。エコーガイド下に22G PTBD針でグリソン鞘に穿刺、ウログラフィンで造影すると肝内リンパ管から十二指腸壁に拡張したリンパ管が造影された。そのまま色素を注入すると粘膜が濃染されるのが内視鏡で確認された。希釈したNBCA-リピドール1.4mlを注入して塞栓した。治療後に腹痛を訴えたが治療翌日に退院可能であった。手技的には成功したがPLEの状態には変化はなかった。2週間後2回目の治療を同様の手技で行ったが、初回と同様に効果は確認できなかった。【考察】Fontan術後の難治性PLEに対する治療として肝リンパ管塞栓術の有効性を示す報告が多く出されている。しかし、本症例では漏出部位が広範囲であったため塞栓が不十分であり効果が得られなかったと思われた。