[III-P6-3-06] 奇異性脳梗塞から考えた右心室機能低下症例に対する心房中隔欠損閉鎖術
Keywords:心房中隔欠損, 脳梗塞, 右室機能
【背景】近年、成人先天性心疾患(ACHD)という枠組みが整備され、ACHD各々の症例に対する治療方針のガイドライン化が進められている。今回自施設で経験した奇異性脳梗塞症例をもとに、右心室機能低下症例に対する心房中隔欠損(ASD)への介入について、文献的考察を加えて検討する。【症例1】45歳男性。純型肺動脈閉鎖(PAIVS)に対し生後3か月時にBrock手術が行われた。中等度の肺動脈弁逆流(PR)および三尖弁逆流(TR)と、それに伴う右心系拡大の経過中に不整脈が出現し、弁に対する治療介入やアブレーションが考慮されていた。その経過で小脳梗塞を発症し、残存ASDによる奇異性塞栓症の診断のもと、PRおよびTRの介入含めて外科的にASDを閉鎖した。【症例2】24歳男性。重症肺動脈狭窄症(cPS)、ASDの診断で、cPSに対し生後11日に肺動脈弁形成術、3歳時に経皮的肺動脈弁形成術が施行された。PSおよびPRは軽度~中等度で経過していたが、ASDは自然閉鎖が得られず両方向性シャントであった。肺動脈弁への介入は待機可能なため経皮的ASD閉鎖術を実施した。【考察】カテーテル治療の発展に伴い、幼少期の開心術が回避可能となる一方で、今回のようにASDが自然閉鎖せず残存する例もみられる。介入時期に関しては様々だが、本症例のような潜在的右心室機能低下症例に併存したASDでは、若年例においても右左シャントを生じることがあり、慢性的な血栓性塞栓症のリスクとなる。将来的な右心室機能低下のフォローアップは必須であるが、欠損孔が小さくてもASD閉鎖について積極的に検討することは、血栓性塞栓症を回避する上で有用と考えた。【結語】右心室機能低下に併存した、右左シャントを有するASDについては、積極的なASD閉鎖術を検討すべきである。