[III-P6-4-06] 大血管転移の周術期不整脈についての検討
Keywords:大血管転移, 周術期, 不整脈
【背景】先天性心疾患周術期に生じる不整脈は、血行動態の悪化を来し術後管理に難渋する症例も多いが治療や予後に関しては不明な点が多い。以前、当院からの報告では乳児期に心臓手術を行った811例の検討では不整脈発症率は73例(14%)でであった。不整脈発生の危険因子の1つとしてJatane手術、大血管転移(TGA)があがった。TGAの遠隔期予後を左右する因子として不整脈が知られているが、周術期の不整脈発生頻度、リスク因子に関しての報告は少ない。【目的】TGAの術後不整脈の発生頻度、予後を明らかにすること。【対象と方法】2013年から2021年に当院でTGAに対してJatane手術を施行した52例。出生週数、出生体重、手術時期、不整脈の有無、発症時期、不整脈に対しての治療介入などの項目について診療録を用いて後方視的に検討した。【結果】対象はTGA 1型39名、TGA2型13名。手術介入は中央値で日齢9、術後観察期間は中央値26か月、周術期不整脈発症例は52例中17例(32%)、周術期死亡例は4例(7.69%)であった。発生した不整脈は心房頻拍もしくは上室性期外収縮がほとんどであった。発症時期は術後8.5日、術後ペースメーカ留置となったのは2例であった。不整脈発症後に介入を行ったのは17例中16例で、退院時に内服加療を継続したのは17例中13例であったが、13例中9例は中央値243日で投薬中止しており以後不整脈の再発なく経過していた。抗不整脈薬はβ遮断薬11例、ジゴキシン2例、フレカイニド3例、ソタロール1例であった。不整脈発生群は非発生群と比較すると在胎週数が短く、身長、僧帽弁輪径が小さかった。【結論】TGA術後約3割に不整脈イベントを認め治療介入が必要であった。不整脈発生群は体格、僧帽弁輪径が小さく、不整脈発生要因として術後左心系への負荷が考えられた。治療介入を行ってもほとんどの症例が、1年以内に抗不整脈薬を休薬することができ、以後不整脈イベントは再燃なく経過していた。