[III-P6-4-07] 内科検診で頻脈を指摘され診断に至った心室頻拍を伴う心臓線維腫の1例
Keywords:心臓線維腫, 心室頻拍, 頻脈
背景:心臓線維腫は自覚症状なく偶発的に発見されることのある原発性良性腫瘍だが、心室性不整脈の合併が多く致命的な経過となる症例の報告もある。症例:生来健康な5歳男児。保育園の内科検診で安静にしても改善しない頻脈(心拍数120bpm)を指摘され、当院に紹介となった。動悸や胸痛などの自覚症状は認めなかった。家族歴として8歳の兄がQT延長症候群でβ遮断薬の内服治療中であった。来院時の心拍数は85bpm、脈の不整なく、心雑音は聴取しなかった。不整脈の可能性を考慮し施行した12誘導心電図でII,III,aVf,V3-6に陰性T波を認めた。胸部レントゲンでは軽度心拡大(CTR 52%)と左第4弓突出を認め、心エコー検査では比較的境界明瞭な38×28mmの腫瘤が左室心尖部を圧排していたが、心機能は良好であり、その他の構造異常は認めなかった。心臓CTで腫瘤容積38mLで内部に石灰化なく、冠動脈の圧排はみられなかった。Holter心電図では数秒から3時間弱持続する心室頻拍(心拍数200bpm)が頻発していた。右脚ブロック型、上方軸で腫瘍起源の心室頻拍と思われた。心臓MRIでT2 強調画像で低信号、ガドリニウム遅延造影されることから臨床的に心臓線維腫と診断した。運動制限とβ遮断薬(ナドロール;0.5mg/kg/日)の内服を開始し、トレッドミル運動負荷試験では心室頻拍は誘発されなかったが、モニター心電図上10秒程度で自然停止する心室頻拍(心拍数120bpm)を認めた。心室頻拍の治療目的で発見から38日目に腫瘍全摘術を施行した。腫瘍は75×30×20mm、白色、弾性硬で、内部は均一であった。Masson’s trichrome染色で線維芽細胞が膠原繊維を伴って増生しており、心臓線維腫と確定診断した。術後経過は良好で、Holter心電図で心室頻拍を認めなくなった。結語:幼児では自覚症状のない心室頻拍が持続することがあり、検診時に安静で改善しない頻脈は重要な所見であると思われた。