[III-P6-4-11] 器質的心疾患をもたない胎児先天性完全房室ブロックの臨床像―宮崎県における過去12年の報告―
Keywords:先天性完全房室ブロック, ペースメーカ植え込み, 胎児徐脈
【背景】当院は県内唯一の総合周産期医療センターであり胎児徐脈管理はほぼ全例当院で行っている。器質的心疾患をもたない先天性完全房室ブロック(CCAVB)は、胎児診断が可能であり適切な管理により予後良好であることが多いと報告されている。【目的】当院で胎児期より管理した器質的心疾患をもたないCCAVBの臨床像を検討し今後の課題を明らかにする。【方法】2010年~2021年に当院で管理した3症例について後方視的に検討した。【結果】診断週数(症例1/2/3)は33週/28週/20週、母体抗SS-A抗体陽性例や母体感染症が判明した例はなく、全例出生後に開胸下ペースメーカ植込み(PMI)を施行した。出生直前CTARは42%/25.2%/30%で胎児水腫例はなし。母体β刺激薬投与 あり/なし/なし、胎児適応での選択的帝王切開例はなかった。在胎週数・出生体重は38週・2749g/41週・3259g/38週・3202gで出生前→出生後心拍数は 65→52bpm/65→65bpm/60→80bpmであった。症例1は出生直後の循環不全、症例3は日齢3に徐脈性心不全が進行したため緊急経静脈的ペーシングを行った。PMI時期は日齢11/日齢51/日齢11、PMI時モードは VVI/DDD/VVIであった。追跡期間は6年8ヶ月/1年9ヶ月/7ヶ月でPMI後の心機能低下はなし。PM関連合併症や死亡例はないが経静脈的ペーシングの2例は大腿静脈閉塞をきたした。【考察】3症例とも適切な出生前後の管理により現在も心機能は保持されている。CCAVBの半数以上は母体抗SS-A抗体陽性と報告されているが、本報告では全例陰性であった。有効な胎児治療に乏しい免疫非介在性CCAVBであっても、慎重な胎児経過観察と出生後の管理により予後は良好と考えられる。しかし経静脈的ペーシングは大腿静脈閉塞リスクがあるため、PMIのタイミングが今後の課題である。