[III-P6-6-02] 当院で経験したCOVID-19 mRNAワクチン接種後心筋・心膜炎5例のまとめー過去の心筋・心膜炎、冠攣縮性狭心症症例と比較してー
キーワード:COVID-19 , mRNAワクチン, 心筋・心膜炎
【背景】COVID-19 mRNAワクチン接種関連の心筋・心膜炎発生率は5.98例/100万回で、12-17歳での発生率は20.94例/100万回と最も高いが、一方で重症化率は低く、血管作動薬、挿管管理を要することはほとんどない。当院でもワクチン接種後心筋炎を5例経験したため、自院での心筋・心膜炎、冠攣縮性狭心症経験例との相違を検討した。【症例】年齢は12-16才、全例が男児で、BNT162b2ワクチン2回目接種後から2-3日で発症。全例で胸痛(3例で圧迫感あり)を主訴とし、2日後までに胸痛は消失した。2例でトロポニンI(TnI)が基準値45倍から440倍以上と著明に上昇し、心電図でも幅広い誘導でST上昇が見られた。全例で解熱鎮痛薬、コルヒチンあるいはアスピリン内服で軽快した。退院後1例で一過性の胸痛再燃があったが、全例後遺症なし。一方、他の心筋・心膜炎経験例では、14例中8例が集中治療ないし死亡した。TnI上昇が同程度の症例で比較しても、ワクチン接種後例では心電図変化や臨床症状が軽かった。ワクチン接種後のTnI高値と冠攣縮性狭心症の経験例2例も比較検討したが、症状、心電図変化は類似していた。【考察】自院例の臨床像は既出の報告と概ね合致した。COVIDワクチン後心筋・心膜炎のメカニズに関しては、免疫の異常活性化、抗体のαミオシンに対する交差反応など様々な推論がされている。TnI高値を伴う2例は、経過が従来の心筋・心膜炎より軽症であり、免疫を介した直接的な心筋障害とは異なる印象だった。一方、冠攣縮性狭心症とは症状・検査所見とも共通点が多かった。また、TnI上昇が軽微だった症例では治療が必要だったかは議論が残る。【まとめ】自院で経験したmRNAワクチン接種後心筋・心膜炎は、TnI高値例を含めて軽症例に留まった。メカニズムや適切な治療介入については、さらなる検討が必要と思われる。