[III-P6-6-03] 漏斗胸手術後1年以上経過して発症した急性心膜炎の1例
キーワード:Nuss法, 心膜炎, NSAIDs
【緒言】小児の急性心膜炎の原因の多くはウイルス感染に伴うものであり、通常対症療法にて軽快する。膠原病、自己免疫疾患、薬剤性など二次性の心膜炎であれば、原疾患の治療を行う必要がある。今回我々は、NSAIDs投与で一旦軽快したものの再燃した急性心膜炎の原因が、漏斗胸の手術の際に植え込んだチェストプレートであった症例を経験したので文献的考察を踏まえて報告する。【症例】症例は11歳男児。1年2ヶ月前に漏斗胸に対してNuss法の手術を受けていた。インフルエンザと日本脳炎のワクチンを接種し5日後から胸痛と左肩痛が出現、当科を紹介された。虚血性心疾患を疑う所見は認めなかったが、胸部XP写真で心胸郭比64%と心拡大を認め、心エコーで全周性に心嚢液の貯留を認めたため急性心膜炎と診断し入院した。アスピリンの内服のみで症状は軽快し、入院5日目の心エコーで心嚢水の減少を確認したため退院した。退院翌日に腹痛、嘔吐があり退院4日目に外来を再診、肝酵素の上昇を認めたためアスピリンを中止して経過観察し、嘔吐と腹痛は改善した。退院5日目から発熱があり、退院から8日目に左肩痛が再燃したため再診、心エコーで心嚢水の著明な増加を認めたため急性心膜炎再発と診断し再入院した。心膜炎の原因として各種ウイルス感染や膠原病などの精査を行ったがいずれも否定的だった。チェストプレートによる心嚢水貯留の可能性を疑いプレート抜去を行ったところ、心嚢水の減少と症状の軽快が得られ退院した。以後再発を認めていない。【考察】Nuss法の晩期合併症として心膜炎を来たすことは稀である。通常の急性心膜炎の対応では改善が乏しく、デバイスを抜去しなければ根本的な治療とならないため、注意が必要である。