第58回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

心筋心膜疾患

ポスター発表(III-P6-6)
心筋心膜疾患 II

2022年7月23日(土) 12:50 〜 13:50 ポスター会場

座長:石戸 美妃子(東京女子医科大学 循環器小児科)
山澤 弘州(北海道大学大学院 医学研究院 小児科)

[III-P6-6-05] COVID-19ワクチン接種後の急性心膜心筋炎の一女児例

田中 愛音1, 上村 和也2, 藤田 秀樹2 (1.加古川中央市民病院 小児科, 2.加古川中央市民病院 小児循環器内科)

キーワード:COVID-19, 心筋炎, 心膜炎

【緒言】COVID-19ワクチン接種後には副反応を生じることがあり、重篤な症状はアナフィラキシー、血栓症、心筋炎、心膜炎などがある。COVID-19ワクチン接種後の心筋炎および心膜炎の発症率は10歳代および20歳代の男性で、特にモデルナ社製で高いとされる。COVID-19ワクチン接種後に急性心膜心筋炎を発症した一女児例を報告する。【症例】12歳女児。ファイザー社製COVID-19ワクチン2回目接種の翌日から39℃の発熱と倦怠感、胸痛が出現、接種後2日目に当院紹介となった。血液検査で高感度トロポニンI:245pg/mlと上昇があり、心電図ではV4-V6誘導主体のST上昇を認めた。心エコー図では心嚢液貯留や壁運動異常は認めず心収縮は保たれていた。単純での心臓MRI検査では有意な所見は得られなかった。ワクチンの副反応とされる急性心膜心筋炎を疑い、入院の上床上安静で経過観察とした。床上安静のみで接種後3日目に解熱、倦怠感は改善し、胸痛も徐々に軽快し接種後5日目に消失した。高感度トロポニンIは入院翌日の1830pg/mlをピークに以降低下傾向となった。接種後7日目に自宅での安静継続を指示した上で退院とした。接種後24日目に施行した心臓造影MRI検査では、遅延造影の所見はなかったが、T2強調画像で前壁、側壁、下壁の心筋心外膜側に高信号域を認めた。【考察】COVID-19ワクチンの接種後心膜炎・心筋炎は2回目接種後1週間以内に発症することが多いとされ、ほとんどの患者は軽症で非ステロイド系抗炎症薬のみで軽快する。本症例も床上安静のみで自然軽快が得られた。今後ワクチン接種年齢の引き下げや接種回数の増加によるワクチン接種機会の拡大により、心膜炎・心筋炎の発症頻度が低いとされている女児や、ファイザー社製を接種した児であっても注意が必要である。診断やフォローのためのMRI検査の適応やその他の検査、運動制限を含めたフォローアッププロトコルの確立が望まれる。