[III-P6-6-07] 心臓M R I検査が診断に有用であった急性心筋炎の一例
キーワード:急性心筋炎, 心臓MRI検査, 心筋障害
【背景】急性心筋炎は前駆症状が非特異的であり、また経過や重症度も非常に多岐にわたるため、しばしば診断に難渋する。また心筋炎は心筋を首座とした炎症性疾患であり、病理学的な疾患名であるため、確定診断のgold standardは心内膜心筋生検である。しかし生検の侵襲性や心臓MRI検査の技術向上などから、近年、心臓MRI検査の所見が重要視されている。【目的】今回我々は心外膜の炎症に始まり、続いて伝導障害を呈した急性心筋炎の男児例を経験した。心臓MRI検査で病初期の心筋炎像を捉えることができ、また心臓MRI検査によって心筋障害の程度を追うことができた。【症例】10歳男児。入院当日朝、胸痛と嘔気嘔吐を認め、近医を受診した。心電図でV3-V4誘導のS T上昇の他、血液検査で心筋逸脱酵素の上昇を認め、当院に紹介された。Vital sign(心拍数 100 bpm、血圧 107/57 mmHg、呼吸数 20 /分、体温 37.3度、SpO2 100 %)や心エコー所見に明らかな異常は見られなかったが上記所見から急性心筋炎と考え、入院の上、経過観察とした。入院後ST上昇が悪化し、心外膜炎に準じてASAを開始した。しかし臨床症状と心電図所見が改善せず、心筋逸脱酵素も上昇傾向にあったため、入院3日目に心臓MRI検査を施行した。心外膜は肥厚しており、Gdによって造影された。心筋は全体的に浮腫が目立ち、遅延相では中隔基部がわずかに造影されたが、心収縮は保たれており、心外膜から炎症が波及した心筋炎のごく病初期と考えた。IVIgを開始したが、翌日、完全房室ブロックによる徐脈から心室頻拍と心室細動を生じ、蘇生を要した。経静脈ペーシングを初めとする全身管理により、その後改善を得た。入院16日目に施行した心臓MRI検査では心筋浮腫が改善しており、病的な造影効果は消失していた。明らかな合併症なく、入院23日目に退院した。【結論】急性心筋炎の診断と評価において心臓MRI検査が非常に有用であった。