[III-P6-6-08] 急性心筋炎の退院後1ヶ月で劇症型心筋炎を再発した11歳女児例
キーワード:劇症型心筋炎, 再発, ECMO
【背景】急性心筋炎後の再発および、再発時の重症化の報告が散見される。今回、初回に完全房室ブロックを伴った急性心筋炎を発症し、退院後28日で心室頻拍を伴った劇症型心筋炎を再発し、膜型人工肺体外循環(ECMO)での管理を要した症例を経験したため報告する。【症例】生来健康な11歳女児。失神を認め、前医を受診。完全房室ブロック、心筋逸脱酵素(CK)、トロポニンT(TnT)高値のため、急性心筋炎が疑われ、当院に搬送。一時的体外ペーシング、免疫グロブリン静注(IVIG)、循環作動薬投与により第5病日に洞調律に復帰し、CK、TnTの正常化を確認後、第21病日に退院した。退院後の心機能は正常であった。退院後28日目に動悸を主訴に受診。非持続性心室頻拍、CK、TnT高値を認め、心筋炎の再発と考えた。抗不整脈投与、電気的除細動でも心室頻拍は持続。IVIG、ステロイドパルス療法、循環作動薬を投与したが、同日に左室収縮が著明に低下し、ECMO管理とした。心機能低下による肺うっ血が増悪したため、第4病日に経皮的心房中隔欠損作製術、同時に心筋生検を実施した。第8病日に心電図で心室頻拍は消失し、第10病日より左室収縮能改善を認め、第12病日にECMOを離脱した。2回のエピソードとも先行感染はなく、有意な血清ウイルスPCR陰性。心筋組織では、高度のリンパ球浸潤が認められ、心筋炎と確定診断した。【考察】急性心筋炎再発は、初回心筋炎の約10%に認められ、再発時に重症化すると報告されている。2回以上の再発例の報告も散見され、再発を繰り返す児における遺伝的素因も報告されている。心筋炎から回復しても、遠隔期の再発がありうることを念頭に置き、非特異的な症状であっても、CKやTnT、心電図、心臓超音波検査により心筋炎の徴候を把握し、補助循環の時期を逸しないことが重要である。