第58回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

心筋心膜疾患

ポスター発表(III-P6-6)
心筋心膜疾患 II

2022年7月23日(土) 12:50 〜 13:50 ポスター会場

座長:石戸 美妃子(東京女子医科大学 循環器小児科)
山澤 弘州(北海道大学大学院 医学研究院 小児科)

[III-P6-6-09] ウイルス性心筋炎を契機にミトコンドリア病と診断した1例

坂田 晋史, 山崎 隼太郎, 清水 啓太, 上桝 仁志, 美野 陽一, 難波 範行 (鳥取大学 医学部 周産期小児医学分野)

キーワード:ミトコンドリア心筋症, 急性心筋炎, 心筋生検

【背景】ミトコンドリア病における心筋症の合併頻度は20~40%とされ、多くはミトコンドリア病におけるスクリーニング検査で診断される。表現型は肥大型心筋症が最も多く、その2年死亡率は36%と不良である。今回、コクサッキーウイルスB5感染に伴う急性心筋炎で発症し、一過性の著明な左室壁の肥厚を呈したミトコンドリア心筋症を経験した。【症例】7歳男児。遠足に向う道中で頭痛を訴え、多量の発汗を呈し、意識障害を認め当院に搬送された。体温34.3度、血圧70/40mmHg、心臓超音波検査では左室拡張末期径は36.7mm(100% of Normal)、左室駆出率(LVEF)20%と低下を認めた。心筋壁肥厚はなかった。加温と循環管理を行い、入院3日目にはLVEF 60%と改善し、全身状態は安定したが、次第に左室心筋壁に全周性の肥厚を認めるようになり、左室流出路での駆出血流速は4.0m/secと狭窄を伴うようになった。また、近位筋有意の筋力低下と間欠的斜視などの所見が顕在化し、頭部MRIで両側乳頭体・中脳黒質近傍に左右対称性のT2WI,FLAIRで高信号の病変を認め、MRスペクトロスコピーで乳酸ピークを認めた。ミトコンドリア遺伝子にT9176Cの変異がありミトコンドリア病と診断した。発症2週間頃より心筋壁肥厚は徐々に改善し、正常化した。発症3カ月での心筋生検では、電子顕微鏡所見でミトコンドリアの増生に加え、ダンベル様や渦巻き状の変形ミトコンドリアがあり、ミトコンドリア心筋症の所見であった。【考察】ミトコンドリア病を背景に、コクサッキーB5ウイルス感染で急性心筋炎を発症し、一過性の著明な心筋肥大を呈したと考えられる症例であった。心筋炎を契機に診断されるミトコンドリア病があり、その診断には心筋生検が有用である。ミトコンドリア病に生じた急性心筋炎は急激な状態の悪化を来たしうるため注意が必要である。