[III-P6-6-13] SARS-CoV-2ワクチン接種後に急性心筋炎を発症した1例
キーワード:SARS-CoV-2ワクチン, 急性心筋炎, 小児
【はじめに】SARS-CoV-2ウイルスによる感染症(COVID-19)の世界的感染拡大に伴い、その対策としてワクチンが開発された。日本においては主にファイザー製、武田/モデルナ製のmRNAワクチンが使用されており、その副反応として心筋炎・心膜炎が報告されているが、具体的な臨床経過についての報告は少ない。今回ファイザー製SARS-CoV-2ワクチン(以下、ファイザー製ワクチン)を接種後に急性心筋炎を来した1例を報告する。【症例】13歳男児。特記すべき既往なし。2回目のファイザー製ワクチンを接種し、同日夜間に発熱、翌日に胸痛と嘔気を訴えた。胸痛は改善傾向にあったが、再増悪を認めたため接種後3日に前医を受診。心筋逸脱酵素の上昇と心電図でST変化を認めたため心筋炎を疑い当院転院となった。入院時の検査で心電図の下壁誘導および左側胸部誘導でST上昇を認めた。血液検査でトロポニンI 7146pg/mlと著明な上昇を認め、急性心筋炎と診断した。不整脈は認めず、BNP 63.1pg/mlと軽度上昇に留まり、レントゲンでCTR 42%、エコーでLVEF 69%と心機能は保たれていた。軽症の心筋炎として慎重なモニタリング下に経過観察とした。入院後は無症状で、接種後4日にトロポニンIはピークアウトした。接種後6日には心電図のST変化も改善したため、退院とした。【考察】mRNAワクチン接種後の稀な副反応として心筋炎・心膜炎の報告がある。若年男性に頻度が多く、軽症例が主体とされている。本症例においても胸痛の症状と心筋逸脱酵素上昇、心電図変化を認めたが心機能は保たれ、不整脈も認めなかった。循環動態に変化を来すことなく軽快退院に至る軽症例であった。【結語】小児におけるファイザー製ワクチン接種後の急性心筋炎を経験した。今回は軽症例であったが重症化の可能性は否定できず、慎重な経過観察が必要と考えらえた。今後ワクチンの若年層への適応拡大に伴い、注意すべき合併症の一つと考えられた。