[III-P6-7-06] ASO術後の冠動脈狭窄に対してCABGを行い改善を得た完全大血管転位症(2)の1例
キーワード:冠動脈バイパス, 冠動脈狭窄, 大血管転位症
【症例】月齢3、体重3.2kgの男児。【経過】完全大血管転位症(2型)、upstairs-downstairs heartと診断された。エコーで冠動脈の起始部とある程度の走行は確認でき、Shaher1と診断した。日齢12に大動脈スイッチ術を行った。術後、左心不全と完全房室ブロックを認め、術後21日目に恒久ペースメーカーの植え込み術を行った。その後も左心不全の遷延をしており、BNP 1427pg/mL, LVEF=40%であった。術後39日目に選択的冠動脈造影を行ったところ、左冠動脈に狭窄は認めなかったが、右冠動脈起始部に75%狭窄を認めた。また、右冠動脈が右室全体と左室側壁から心尖にかけて広範囲に支配していることが判明した。ドブタミン負荷エコーで心筋のバイアビリティは保たれていることは確認できたが、β遮断薬やACE阻害薬による抗心不全療法では心機能は改善しなかった。冠血流を改善させるため、月齢3に右内胸動脈から右冠動脈へのCABGを行った。術後短期間で心機能は改善、術後17日目でLVEF63%, BNP 136pg/mLとなった。術後1年の時点でも右内胸動脈の開存は確認されている。【結語】通常と異なる心形態のTGAでは、ASO前に冠動脈の末梢支配まで十分に評価する必要があり、選択的冠動脈造影も検討すべきである。また、冠動脈狭窄による虚血に対しても体格が小さくともCABGは治療選択肢の一つになりうる。