[III-P6-7-11] 心室中隔欠損症に対する心内修復術後安定期に急性脳症を発症した18トリソミーの3歳女児例
Keywords:急性脳症, 心内修復術, 全身性炎症反応症候群
【背景】人工心肺 (CPB) は全身性の炎症反応を惹起する。心内修復術 (ICR) 後の急性脳症の発症は稀である。【症例】18トリソミー (18T)の3歳女児、心室中隔欠損症 。3ヶ月時に肺動脈絞扼術、今回、3歳でICR を行った。(CPB:1時間34分、大動脈遮断:49分)。順調に経過したが、術後8日目に軽度の咳嗽・微熱、翌日には40度の高熱・頻脈を認めた。術後10日目より細菌感染を疑い (CRP 0.4 mg/dL、WBC 22,000/μL 、Procalcitonin (PCT) 11 ng/mL)、Cefotaximeを開始した。同日夜間に喘ぎ呼吸・意識障害が出現した。血液検査 (CRP 0.36 mg/dL, WBC 16,500/μL, PCT 96 ng/mL, LDH 796 U/L, CPK 488 U/L, Cre 0.76 mg/dL, AST 70 U/L)からは全身性炎症反応症候群 (SIRS) が疑われた。術後11日目に痙攣し、意識障害は遷延した。各種ウイルス検査は陰性。脳波は低電位・全般性徐波、頭部MRI で両側前頭葉皮質の拡散低下を認め、急性脳症と診断した。発症後約4ヶ月でびまん性脳萎縮が進行し、重度の筋緊張亢進を遺した。【考察】小児ICR後急性脳症は数例しか報告がなく、いずれも術後数日の安定期に発症している (本症例は術後8日目)。周術期には脳虚血を疑う所見はなく、発症時検査データからはSIRSが疑われ、CPBが増悪因子となった可能性はある。また、基礎疾患 (18T)の影響は不明であるが、当院ではこれまでに14例の18TにICRを行い、周術期に重篤な合併症を起こした症例はない。今後、サイトカインプロファイルを解析予定である。【結論】ICR後数日の安定期に急性脳症を発症することがあり、その病態解明と早期発見・治療が望まれる。